多くの高齢者ホームには、それでも強く明るく毎日を送るおじいちゃんおばあちゃんの姿があります。これまでの人生において仕事や人間関係でいやなこと、つらいことがあっても生き延びてきたしたたかさは健在で、環境に慣れる力は若い世代以上、“自己断念”した記憶すら塗り替えられているかもしれません。
「やむにやまれぬ現実のなかで、自分に折り合いをつけてホームに入ってきたお年寄りが、今、居心地がいい、おいしい、楽しい、今はこのホームにいて幸せ。そう思ってもらえるのがベストではないでしょうか」(高口氏)
自宅でもホームでも、離れていても常に気にかけて“今”を居心地よくしてあげること、それが家族にできる精いっぱいのことかもしれません。
(文/別所文)
高口光子(たかぐち・みつこ)
元気がでる介護研究所代表
高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。老健・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「高口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の「毒(ドク)」はコドク(孤独)です』など著書多数。