川端康成お好み季節の生菓子 御菓子司こまきで6月に供される「あじさい」。抹茶とのセットで1001円(税込み。以下同)。持ち帰りは6個2202円から。(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)
川端康成お好み季節の生菓子 御菓子司こまきで6月に供される「あじさい」。抹茶とのセットで1001円(税込み。以下同)。持ち帰りは6個2202円から。(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)
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 大河ドラマで人気の鎌倉。紫陽花見物で訪れた折には、文化人に愛されてきた名店の味を堪能しよう。

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■小林秀雄、小津安二郎のオリジナル天丼

手前が小林丼、奥が小津丼(かきあげ、車海老、白身魚、野菜)。ともに3870円(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)
手前が小林丼、奥が小津丼(かきあげ、車海老、白身魚、野菜)。ともに3870円(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)

 小林秀雄と小津安二郎の名を付けた天丼がある。2人の好みに応じて作ったもので、2代目店主夫人の佐藤啓子さんが説明する。

「うちのかきあげは、芝エビ、小柱、三つ葉が入っています。小林先生は『かきあげにエビが入っているから、エビは要らない』とおっしゃって。そのためかきあげ以外には、穴子と白身魚しかお載せしません」

 小林は、白身魚では特にメゴチが好きだった。昼に訪れたときは必ずこの天丼を食べ、夜はカウンターで酒を飲みつつ次々揚がる天ぷらに舌鼓を打ったという。

「小津先生はお酒が好きでした。母の話によりますと、天丼の上の天ぷらをつまみながら、カンカンに熱くつけたお銚子を10本も飲み、最後に汁の染みたご飯と赤出汁を召し上がったそうです」

天ぷら ひろみ(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)
天ぷら ひろみ(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)

・天ぷら ひろみ

神奈川県鎌倉市小町1−6−13 寿名店ビル2F/TEL 0467−22−2696/営業時間11:30~14:00 17:00~19:30/水曜定休

■川端康成は生菓子を手土産にも利用した

 北鎌倉駅前の和菓子店で、季節の生菓子が1品だけ置かれる。菓子は大体週替わりだが、6月はほぼ1カ月、「あじさい」が供される。白餡に賽の目に切った錦玉をあしらったものだ。

 川端康成はここの菓子を好み、東京に行くときの手土産にも利用した。2代目店主夫人が回想する。

「鎌倉駅を何時何分の電車に乗る、と電話をいただくんです。北鎌倉のホームまで届けに行きました」

 反対に川端が、店主に土産を持ってきたこともある。

「何時何分に下りホームに来るよう電話がありました。『古都』執筆のため長期間京都で過ごされた後で、京土産をいただきました」

サインを頼んだところ、川端はサラサラと明恵上人の歌を書いた。それを掛け軸に仕立てた(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)
サインを頼んだところ、川端はサラサラと明恵上人の歌を書いた。それを掛け軸に仕立てた(撮影/松永卓也、写真映像部・東川哲也)

・御菓子司こまき

神奈川県鎌倉市山ノ内501/TEL 0467−22−3316/営業時間10:00~16:30/火曜定休

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