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母の証言だけで長編は難しいと思っていたとき、50歳を過ぎた私の前に夫となる荒井カオルが現れたんです。フリーライターの彼は聞き上手で、母は彼に「在日としての人生」や「今も北朝鮮にいる息子たちをどう思っているか」などを改めてじっくり話してくれた。なにより、いまだに将軍様の肖像画を掲げているようなクレージーな家庭に彼がふっと入ってきて母と打ち解けているのをみて「コメディーみたいだな(笑)」と思ったんです。この状況を描けば作品になると確信しました。
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母と夫が一緒にスープを作るのを見ながら「イデオロギーが違っても、互いに顔をあわせてごはんを食べることができれば、世界から戦争はなくなるんだろうな」とつくづく思いました。4・3についての入門書になればとも思いますが、「勉強になった」よりも「おもしろかった」と言ってもらえるとうれしい。見たあと「今日はみんなで韓国料理を食べよう」と思ってもらえたら最高です。(取材/文・中村千晶)
![ヤン ヨンヒ監督/父を主人公に家族を描いた「ディア・ピョンヤン」(2005年)、姪の成長を描いた「愛しきソナ」(09年)、初の劇映画「かぞくのくに」(12年)などがある。ユーロスペースほか全国順次公開中/photo (c)PLACE TO BE, Yang Yonghi](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/c/8/840mw/img_c8c7be8eabfd8956d5cc110261be07b647598.jpg)
※AERA 2022年6月27日号
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