「単にビラを配るよりも市民との対話のきっかけになります。そのとき、反対運動の活動だとわかっていて『オレ賛成!』などと挑発しながらシールを貼っていくのは、ほとんどがスーツ姿の中堅サラリーマンで圧倒的に男性ばかり。維新の支持層の中心は勝ち組・中堅サラリーマンであることを実感させられたのです」
こうした「勝ち組」、あるいは「勝ち組になりたい」との願望を抱く人々の意識は、貧困や格差と表裏一体の関係にある。冨田氏によれば、彼らは「自分たちは多額の税金や保険料を納めているのに何の見返りも受けていない」という重税感を抱く一方で、「税金を納めていない貧乏人と年寄りに自分たちのお金が食い潰されている」という被害者意識にも似た感情を抱いているという。その矛先は、生活保護受給者など貧困層や高齢者層などに向けられる。
元アナウンサーの長谷川豊氏がブログで人工透析患者について「自業自得」などと発信し社会的な批判を浴びたが、維新は2017年衆院選で公認候補として擁立した(結果は落選)。冨田氏が続ける。
「自堕落な生活を送って病気や貧困になるのは自己責任というわけです。新自由主義における『勝ち組』の典型的な意識ですが、維新はこうした考えと親和性が高い層に強固な支持基盤をつくり出していった。新自由主義的な『官から民へ』『身を切る改革』をスローガンに、この10年余りで医療、福祉、教育の切り捨てを断行してきました」
■身を切る改革で犠牲にしたもの
赤字体質を理由に市立病院を次々と独立行政法人化、あるいは廃止して府立病院に統合してきた。07年から19年までの12年間で、府の医師・看護師を含む病院職員(公務員)を8785人から4360人へと50.4%も削減(全国平均は6.2%)。保健所職員は748人から506人にまで減らした。
また、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の衛生部門を統合し、大阪健康安全基盤研究所を創設。人員を3分の2まで削減した。
こうした「身を切る改革」には、コロナ禍の中、「副作用」も指摘されている。
コロナ患者を受け入れる公立病院を減らし、医療従事者を半減させたことで医療が逼迫。6月21日現在、コロナ感染による死者数は人口100万人あたり全国平均が246人であるのに対し、大阪府が578人。大阪市では782人と、全国平均の3倍以上だ。