感染者が急増した20年5月、松井一郎市長は十三市民病院(淀川区)を全国初の「コロナ専門病院」として重点医療機関に指定し、主に中等症患者を受け入れた。地元政界関係者が語る。
「突然の決定に、現場は防護服がまったく足りず大混乱。松井氏は代用として雨ガッパの提供を市民に呼びかけ、30万着を超える雨ガッパやポンチョが市に届いた。だが、専門家から防護服として使えないと指摘され、引き取り手がないまま市庁舎の玄関ホールに山積みにされていたのです」
18年には、周産期医療などに取り組んできた住吉市民病院(住之江区)を廃止した。約2キロ東に府立急性期・総合医療センターがあることから「二重行政の解消」が理由だ。
「住吉市民病院は地元密着型で、若い母親やシングルマザーに寄り添う医療を行ってきた。最先端の高度医療を提供する府立病院とはニーズがまったく異なる。廃止後は、閉鎖病棟を活用してコロナ患者に対応すべきとの医療現場の要望を無視し解体。十三市民病院をコロナ病院に指定する直前のことで、やっていることが矛盾している」(同)
維新が時に無謀にも見える「改革」にまい進する背景には、大阪経済の地盤沈下がある。前出・冨田氏がこう解説する。
「首都一極集中のあおりを受けてきた大阪は東京へのコンプレックスがあるから、『成長』『発展』という言葉に弱い。だから、失敗例は目に入らず、カジノや万博に飛びついてしまう。大阪の地べたで暮らす庶民たちは、大阪の魅力をそんなところに見いだしていない。『食い倒れはいても、行き倒れはいない』という人情と助け合いの心を誇りに生きてきたのです」
コロナ感染による死者数の多さなどについて、日本維新の会本部に党としての見解を聞いたが、「大阪府市の行政に直接関わる内容になりますので、日本維新の会にご質問いただく内容としてはそぐわない」との回答だった。吉村府知事は過去の会見で、「大阪は死者数が多いと言われるが、致死率で言うと、都道府県で真ん中あたり」「専門家に聞いても(理由は)わからないというのが現状。僕自身もこれが明確な理由というのが言えない」などと述べていた。
維新の「改革」が国民にどう受け止められるのか。存在感が増した今、これまで以上に中身や結果が問われることになりそうだ。