──これまで、「二度とやりたくない」と心折れそうになったこともあった。それでも、「すごいな」と思う先輩や「一緒に仕事をしてみたい」と思う演出家がいる限り、役者の仕事を続けていきたいという。中山が考える、自身の“武器”とはなにか。

中山:「覚悟」なんじゃないかな、と思います。恐れない心や、傷つく覚悟。そうしたものであれば、僕は現場に持っていくことができる。

役柄を思うようにつかめないときは苦しいですが、経験上、稽古期間のどこかで「ピン!」とくる瞬間があるんです。なぜかうまくいかない、しっくりこない、と引っかかっていた何かが「これだ!」と言わんばかりにわかる瞬間がある。血管に詰まっていた石が取れるような感覚ですね(笑)。つっかえていたものが取れると、「あそこがこうなら、じゃあ、ここはこうかもしれない」と、ほかのシーンの演じ方も変わってくる。そんな瞬間が訪れるまで、頭と体を使い、考え続けるしかないと思っています。

 何かを表現しようとするときに、それを受け取ろうとしてくれる人がいるって、ありがたいことだと思うんです。「表現」を見つけるまではつらいこともありますが、その分、自分なりの表現を見つけ、本番を迎えた時は、喜びも達成感も大きい。舞台の上でも、「生きているな」と感じることができるんです。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

AERA 2022年7月18-25日合併号