「ガチ中華」台頭で
横浜中華街の立ち位置に変化
東京でガチ中華やマジ中華が増えているのは、主に新宿・大久保・高田馬場エリア、池袋エリア、小岩・新小岩エリアの3カ所だ。
それぞれに特徴があるが、特に勢いを増しているのが池袋エリアだ。「友誼食府(ゆうぎしょくふ)」などいくつかのフードコートがあり、そこにいればいろいろな地域の料理を1カ所で堪能できたり、中国産の食材や土産物、調味料を買って帰ったりすることができる。
また、小岩・新小岩エリアは、埼玉県川口市と並び、中国人が多く住んでいる地域であり、「そこに住む人のための地元の中華料理店」が多いことが特徴だ。「これこそが(飾り立てていないという意味で)まさにガチ中華だ」とわざわざ足を運ぶ日本人が増え、有名になった。
いずれのエリアも、当初は一部のマニアックな日本人客や故郷と同じ味を求める中国人客が中心だったが、メディアで報道される機会が増えて、次第に「一般の日本人」も訪れるようになり、プチ中華街の様相を呈している。
そのようなトレンドの中、横浜中華街の立ち位置が難しくなり、横浜中華街ならではの特徴を打ち出しにくくなってきたことは容易に想像がつく。
むろん、横浜中華街にも負けず劣らず多数の中華料理店が集積しており、横浜中華街の公式サイトによると、中華料理店は約200店に上る。中には、そこに行かなければ食べられない名物料理を出す有名店もあるが、観光地化されている横浜中華街に、トレンドのガチ中華やマジ中華を求める人は少ない。
かといって、激安の「食べ放題」に魅力を感じるかといえば、そうとはいえないというのが本音だろう。いわゆる半チャンラーメンセットのような町中華もまた、ガチ中華とは別に日本人に愛されているが、横浜中華街に町中華を求める人もいない。
そういった意味でも、横浜中華街は厳しい立場に立たされている。横浜中華街のシンボル的存在、聘珍樓の閉店は、そんな横浜中華街の今を象徴するような出来事といっていいだろう。