銃撃された安倍晋三元首相はロシアのプーチン大統領と個人的な関係を深めながら北方領土問題に取り組んできた。なぜ対ロ外交に力を注いだのか。銃撃事件はどんな影響を及ぼすのか。日本維新の会の鈴木宗男参院議員に聞いた。
* * *
――安倍晋三元首相が銃撃された一報をどう受け止めましたか。
私は、北海道小樽市で参院選の候補者の応援演説に入っていました。午前11時39分、報道関係者から安倍元首相が撃たれたと聞かされ、がくぜんとしました。
あの日、安倍元首相は本来であれば、長野県へ行く予定でした。どうして奈良県へ行ってしまったのか。なぜ日程を変えてしまったのか。運命の巡り合わせを考え、日に日にむなしさが募ります。
政治家というものは、ときに命が脅かされる存在です。
私も20年前、大きなバッシングを受けたときに、かみそりが送られてきたり、「殺すぞ」という電話がかかってきたりしました。「なにくそ、負けてたまるか」と思ってやってきました。ただ、今回は銃。狙われてしまったら、防ぐことが難しい事案です。まさか日本でこんなことが起きるとは想像すらしていませんでした。
――ロシア・北方領土問題に安倍元首相とともに向き合ってこられました。
私は、ロシア・北方領土問題をライフワークにして、現場で汗をかいています。安倍元首相は、そんな私をとても大事にしてくれました。
2015年12月28日、首相官邸で2人きりで約1時間、じっくり話をしました。同月22日にあった内閣制度創始130周年記念式典に出席したところ、安倍首相(当時)のほうから声をかけていただいたのです。
「鈴木先生、たまには官邸に来てください」
「いやいや、総理はお忙しいでしょうから」
そんなやり取りをしていたら、秘書官がその場で日程を調整してくれました。
午後3時の約束が当日の朝になって30分後ろにずれました。ちょうどその日、慰安婦問題の日韓合意がなされ、岸田文雄外務大臣(当時)の会見があったからです。執務室を訪ねたら、ソファでふーっと大きく息をついて、自分自身に言い聞かせるように、
「大きなレールをひけてよかった。日本も韓国も双方守らなければいけない合意です」
と言われたことが印象的でした。そして、
「来年から北方領土と日ロ関係をやります。鈴木先生、お力を貸してほしい」