「皇室を出る」という望みが断たれるかもしれない
今後の皇室のあり方を検討する有識者会議が、安定的な皇位継承を行うために、女性皇族が結婚後も皇室に残るという報告書を提出したのだ。
報告書にはそのほかに「旧宮家の男系男子を養子に迎える」という案があるのだが、先日行われたNHKの世論調査では、「女性皇族が結婚後に皇室に残る」という案には65%が賛成し、反対は18%しかなかったと週刊新潮(1月27日号)が報じている。
ちなみに、「男系男子を養子に」は、賛成が41%、反対が37%と拮抗きっこうしているそうだ。
これが国会で承認されれば、佳子さんが願っているといわれる、「皇室を出る」という望みが断たれることになる。
元皇室担当記者で成城大学の森暢平教授は、佳子さんが昨年10月10日に、日本ガールスカウト運動100周年を祝う「国際ガールズメッセ」の式典にオンラインで参加し、こういう内容のビデオメッセージを寄せたとサンデー毎日(2月6日号)に書いている。
「世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で、日本は156カ国中120位にとどまりました。この現状はとても残念なことですが、日本においてもジェンダー平等をめぐり努力を重ねている方々が多くいらっしゃいます。今後、ジェンダー平等が達成され、誰もがより幅広い人生の選択肢を持てるようになることを、自らの可能性を最大限、生かす道を選べるようになることを、そしてそれが当たり前の社会になることを切に願います」
憲法の矛盾は生前退位と結婚問題で明確になった
国民の間では、女性天皇、女系天皇の是非が議論されていた時期である。自分の弟が天皇になることが確実になっているのに、これは、並々ならぬ覚悟をもった勇気ある発言である。
ネットではすぐに、「政治的な発言ではないか」という非難があったという。保守主義者からの反発もあったそうだ。
「そうした人々から見ると、伝統を体現すべき皇族が、ジェンダー平等という近代の価値観をもとにした発言をすること自体が『許せない』となるのだろう」(森教授)
しかし、男女平等、共同参画社会の実現は、一部を除いては、どの国も目指すべきグローバルで至極当然の考え方である。
日本国憲法4条にある「天皇は……国政に関与する機能を有しない」という条文は、森教授がいうように、「一定の時期までは天皇制を封じ込める役割を果たした。しかし、今は逆に、天皇・皇族の人間的なあり方や人権を奪う規定となってしまった。
憲法の矛盾は、平成の天皇(現在の上皇さま)が退位の自由を求めた意思表明、そして、眞子さんの婚姻の自由の権利行使で、明確になった」と、私も考える。
天皇も皇族も意見や意思を持った一個の人間である。それを制限される現状をこそ見直されるべきであるはずなのに、いまだに「天皇は男系男子に限る」として女性を排除するなど、現代人の感覚からズレているというしかない。