「瀬戸内海がゴミ箱になる日」から(提供/南海放送)
「瀬戸内海がゴミ箱になる日」から(提供/南海放送)

 砂浜にはマイクロプラスチックが目立つところがあちこちにある。台風が訪れるとそのゴミが根こそぎ流されて佐田岬の南側に帯のように漂ったのだ。砕け散ったマイクロプラスチック、回収するのはとても困難だ。砕ける前に回収しなければ海の汚染は防げない。

 連日、発泡スチロールの白い塊を大網に入れて仲間たちと集める岩田さんたち。ところが拾えば拾うほど役所の負担が増えるというジレンマがある。海洋ゴミの受け入れ対応は自治体ごとにまちまち。大型発泡スチロールや漁業用のブイは拾っても受け入れてもらえない場合もある。また、大量の海洋ゴミを燃やすと高温になって炉を痛めるともいう悩みもある。

■回収したプラスチックゴミを市は…

 南海放送は愛媛県の4市にアンケートした。大型発泡スチロールと漁業用ブイについては、受け入れる市が2つ、受け入れない市が2つと対応が分かれた。受け入れない市の一つは「そのゴミの回収と処分にいまボランティアも事業者も行政も大変苦慮している」と回答した。瀬戸内海全域の問題なのに、ツケが個々の市に負担としてのしかかる。調査報道があぶり出した瀬戸内海のゴミの実情といえる。

 プラスチックゴミやマイクロプラスチックは地球環境に生きるあらゆる生物に影響を及ぼす極めて深刻な問題だ。だが、その深刻な問題を大所高所から、地球規模の視点からいくら伝えても、視聴者に「自分の問題」だと受け止めてもらうのは難しい。この番組は、自称「かっこいいクソじじい」が家族や仲間たちと奮闘する姿に焦点を当てて伝えた。

 等身大の視点のドキュメンタリーは、心に響く。

◯水島宏明(みずしま・ひろあき)/1957年、北海道生まれ。上智大学文学部新聞学科教授。札幌テレビ、日本テレビで在英・在独特派員、地域密着の情報ワイド番組のデスク、防衛庁・外務省記者、ドキュメンタリー番組を制作。「ネットカフェ難民」という造語でキャンペーン報道。2011年の東日本大震災の後で原発をめぐるドキュメンタリーを制作。2012年から法政大学社会学部教授を経て上智大学文学部新聞学科教授。放送批評懇談会理事(2016~20放送批評誌「GALAC」編集長)、2017~21日本マスコミ学会理事

AERAオンライン限定記事。NNNドキュメント「瀬戸内海がゴミ箱になる日」はBS日テレ9月5日(日)8時に再放送予定)

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