
話を戻そう。捨てられたプラスチックゴミが瀬戸内海に流れ込み、風や潮の流れで集められ、何十年も堆積し、プラスチックゴミの「層」になる。簡単に掘り起こせないほど厚く積もった「層」。それを岩田さんらは手で掘り起こしていく。
一緒に清掃活動する仲間が海の中を指さす。海中にはコンビニ弁当のプラスチックの箱が重なっているのが見える。ウニの姿も見える脇にプラスチックの弁当容器がたくさん沈んでいる。表面に石苔のような汚れが付着している。一番多いのはコンビニのお弁当の容器だという。
「プラスチックっぽいお刺身などの容器は浮いて見えるところに来てくれるので拾えるが、電子レンジでも大丈夫なピニールの透明で硬いものは全部、海に沈んでいる」
浜辺に漂着するプラスチックゴミの数十倍、数百倍のプラスチックゴミが海の中にあるという。
岩田さんは発見したゴミスポットを地図の上に様々な色のピンでマークしている。赤いピンでマークするのは問題の場所。たとえば10人で10日かけても拾いきれないほどの量が集まり、マイクロプラスチックも集まっている浜辺がある。全体で500カ所以上のゴミの浜を見つけた。
その中でもとりわけ心配するゴミスポットがある。
「4年間、拾い続けてもマイクロプラスチックの層にまでたどり着かない。上のゴミも拾えない。季節風、海流によってゴミがたまる場所」
だという。湾がV型になっている奥にある浜辺だ。衛星写真でもゴミがあるのがわかる。
「すごい量で4年間拾い続けている」
そのスポットは、愛媛県の中でも特に美しい自然が残る佐田岬半島にある。
佐田岬半島の北側にある御所ヶ浜。岩田さんがもっとも気にかけているゴミスポットだ。訪れると流木などと一緒に小さなプラスチックゴミがたまっている。
岩田さんは5年前の2016年の御所ヶ浜を初めて訪れた。知人から現状を見てほしいと言われたのがきっかけだった。
「見てみてびっくりした。人生が変わった」
■風光明媚な半島の海岸にプラスチックゴミ
佐田岬半島の塩成海岸は大型発泡スチロールが漂着するスポット。発泡スチロールは波で削り取られて次第に小さくなる。削り取られた部分は細かい粒子のマイクロプラスチックとなって、海岸線の砂や小枝などと混じり合って浜辺全体が白っぽく見える。
昨年9月には佐田岬半島の沿岸にマイクロプラスチックの白い「帯」が現れた。目撃した岩田さんによれば、およそ20キロメートルの長さに及んだという。