盛夏を走る神戸市電の一コマ。湊川神社の杜の蝉しぐれが今も耳に残る。画面右脇には木材を積んだ「マツダT1500」三輪自動車や「スズキ スズライトキャリイ」軽トラックなど、懐かしいクルマが写っていた。 楠公前~裁判所前(撮影/諸河久:1964年8月4日)
盛夏を走る神戸市電の一コマ。湊川神社の杜の蝉しぐれが今も耳に残る。画面右脇には木材を積んだ「マツダT1500」三輪自動車や「スズキ スズライトキャリイ」軽トラックなど、懐かしいクルマが写っていた。 楠公前~裁判所前(撮影/諸河久:1964年8月4日)

 栄町線を走る12系統は脇浜発着の循環系統で、脇浜→三宮駅前→元町→楠公前→東池尻二丁目→湊川公園西口→楠公前→元町→三宮駅前→脇浜の運転経路だった。12系統だけでも、この楠公前交差点を二回走る勘定になる。

 楠公前交差点のシンボルが、画面中央に見える転轍手が勤務する信号塔だ。エアコンなどなかった時代、写真のような「日除け」で直射日光を凌いでいた。12の系統に及ぶ市電が接近するたびに的確な判断で進路を設定する転轍手の仕業は激務だったと推察する。

■撮影:1966年8月4日

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
諸河久

諸河久

諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情(天夢人)が絶賛発売中。

諸河久の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
疲れた脚・足をおうちで手軽に癒す!Amazonの人気フットマッサージャーランキング