写真家・京嶋良太さんの作品展「流れる響きのなかで」が7月29日から東京・目黒のコミュニケーションギャラリーふげん社で開催される。京嶋さんに聞いた。
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本作品は、自然と人のつながりをテーマにした「Symbiosis(共生)」シリーズの4作目なのだが、それまでの作品とはかなり違う印象を受けた。
写真を見せてもらうと、それが大量の土砂に埋もれつつあるダム湖を写したものであることがすぐに分かった。
深い谷の空気を吸い込んだような湿ったコンクリート。粉状の岩くずを含み、白く濁った水の流れ。ダムによってせき止められた渓谷は広大な河原に変わり、そこで石や砂を採取するショベルカーやダンプカーがせわしなく動き回っているように見える。
■想定していなかった風景
京嶋さんがこれまでの作品で写しとってきた人の営みは、山のなかにひっそりとある集落の小学校跡であったり、シカを追う猟師の姿だった。
シカを解体する様子は見方によっては血なまぐさいシーンだ。しかし、人間が身一つで獲物を追い求める姿や、その「命をいただく」行為には崇高さが感じられた。
それに対して今回の作品にあるのは生々しい人間の経済活動であり、それをあざ笑うがごとく押し寄せる土砂は、自然が圧倒的な力を人間に見せつけているようでもある。
「作品づくりで何か、心境の変化があったんですか?」と、たずねると、「まあ、なんて言えばいいんだろうな」と言い、しばし口ごもる。
「最初はぜんぜん、想定していなかったですから。この景色を撮っていて、がらっと変わっちゃったんです。その見え方が……」
■オーストラリアで写真に開眼
京嶋さんは1979年、甲府市で生まれた。
高校卒業後は札幌に移り住み、資金をためた。
「そのころはスキューバダイビングとか、海への憧れがすごくあった。南国で暮らすことにも興味があった」
2000年、就労が認められるワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアを訪れた。