カメラは1台だけ。3人をずっとワンカットでひたすら撮り続けた。
「俳優が全身全霊で演技しているのに、たくさんのカットで切っていくとつまらなくなる。カメラも1台だけのかぶりつきで、ドキュメンタリーを撮るような手法でした。現場で生まれたリアリティーを感じてほしいです」
撮影時はまだ新型コロナウイルスの感染拡大前だったこともあり、撮影の合間に、黒崎氏は三浦さんと、京都市の居酒屋で酒を酌み交わしたという。
「春馬君とは、京都市の祇園から鴨川近くの木屋町通り付近で、何度か一緒に飲みました。春馬君は日本酒を飲んでいましたが、いくらでも飲めそうな感じでした。彼はお酒も好きだし、料理にも詳しい。食べ物についてもいろいろと話した記憶があります。私もお酒が好きだから、あんまり飲み過ぎると、プロデューサーから電話で『翌朝早いんですよ、いいかげん、帰って来てください』と怒られたものです」
2人で飲みながら、演技論にも花が咲いたという。
「春馬君は軍人の役だったんですが、映画では戦場が描かれるわけではない。一時帰還して故郷に戻り、家族と過ごす日々が描かれています。春馬君は、そんな日々がいかに大事かということを言っていました。また召集されて、軍隊に戻るんだから、一日一日、限られた日々を大切に生きるということ、家族や幼なじみとの何げないやさしい時間がどのくらい大切かということが伝わるように演じたいと言ってくれました。僕としては、とても心強かったです」
役者としての三浦さんを、黒崎氏はこう評価している。
「ひとことで言うと、彼は”体幹”がすばらしいんです。この映画では軍人を演じていますが、どういう姿勢で立って、どう歩くかまでこだわり、何度も何度もトレーニングを積んで、体全体で役を表現をしてくれました。セリフがうまいとか、ルックスがいいとか、ほめられるところはたくさんあります。でもそれ以上に特筆すべきは、芝居するために適した“筋肉”が見事だということ。春馬君が役者として鍛えた“体幹”があってこその演技だったと思います」