コロナ禍でね、吉本興業はなんばグランド花月とか劇場からのネタ配信もやっているんですけど、実は「オール阪神・巨人」は一切出てないんです。申し訳ないけど、全部お断りしています。テレビ同様、配信で流してしまうと、劇場に足を運んでいただく方に申し訳ない。これは、もう僕の信念みたいなもんですね。
先ほどね、収入が10分の1になったと言いましたけど、逆に言うと、僕がもらっているギャラを全部で100としたら、そのうち85から90くらいは漫才でもらうギャラです。そこがなくなったので、今はテレビ出演とかでもらうギャラだけ。その結果、10分の1になったんです。
これは僕が勝手に決めているだけですが、「自分は漫才師です」と名乗る人には、最低でも給料の半分、できたら3分の2は漫才で稼いでいてほしい。それが僕の思う漫才師としてのルールでもあります。
テレビの合間に劇場で漫才をやって、漫才でもらうギャラの割合は2割くらいという人も多いですし、それはそれで悪いことではないんですよ。
ただ、職業として「漫才師です」と言うんやったら、少なくとも半分以上は漫才からのギャラというのがカタチじゃないかなと僕は思っているし、そうしてきました。
コロナ禍は、まさにそのど真ん中を攻撃してくるようなものですから、自分が大事にしてきたものをことごとくつぶされた気がしました。「もう、劇場芸人は終わりじゃないのか」と考えもしました。ナニな話ですけど、鬱(うつ)にもなりかけてましたしね。
ただね、ここまでなっても、ここまでなったからこそ、自分は心底、劇場が好きやし、漫才が好きなことを痛感しました。
あとね、時代が変わる中で、笑いを作りにくい時代にはなったとも言われます。
確かに、昔はアホ、ブス、ハゲ……当たり前みたいに出していた言葉が、今の時代は「それはナシで」になってきています。セクハラ、パワハラみたいな〇〇ハラスメントは増える一方ですし。