いまや、スマホひとつで何でもリアルタイムで共有できる時代。だからこそ、「一晩待つ」という不便に思えることも、どんな写真になって出てくるのか、不思議とワクワクする。昭和世代には当たり前だった現像の待ち時間さえ、愛おしくなる。この「デジタル版写ルンです」に、2千万ドルの資金調達が報じられるなど世界が注視している。
ITジャーナリストの富永彩乃さんは、ディスポの特徴をこう指摘する。
「後からデータを加工できないので、基本的には“映え”を意識しなくていい。新しい物好きのアーリーアダプターのほか、インスタ疲れを感じている人にも注目されています」
おしゃれに作りこんだ世界観ではなく、撮ったままの写真を見せ合う。撮影したその場で写真の良し悪しに一喜一憂するのではなく、純粋にその瞬間を楽しんでほしい──ディスポには、開発者のそんな思いもこめられている。
だが、富永さんはこうも言う。
「機能が制限されるほど、その中で試行錯誤してクリエイティブなものが生まれます。みんなが同じ条件で撮るので、被写体の良さや構図などのテクニックも問われてくる。今後ユーザーが増えれば、結局は映えが気になってしまう可能性はあります」
SNSの世界に彗星のごとく現れたルーキーが今後どうなるのか、瞬きせずに見守りたい。(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年3月22日号