“染谷信長”は少年時代から月さか代やきを剃っていた。これは視聴者に、外見からもこれまでの信長とは違うことを印象づけるためだという(写真提供/NHK)
“染谷信長”は少年時代から月さか代やきを剃っていた。これは視聴者に、外見からもこれまでの信長とは違うことを印象づけるためだという(写真提供/NHK)

――信長は大好きな父信秀だけではなく、母・土田(どた)御前の愛情にも飢えていた。

 第18回「越前へ」では、母親の寵愛(ちょうあい)を受ける弟・信勝を殺害します。

 信勝の逆心を知った信長は、病気を装って信勝を呼び寄せます。なにも知らない信勝は、病気見舞いの“万病を鎮める湧き水”を持参。中には、信長を殺害するため毒を入れています。

 しかし信勝の企みを知る信長は、信勝にその水を飲むように迫る。最初は穏やかに、やがて母親の寵愛を受ける信勝への憎しみが湧き上がってくると声高になり「信勝、お前が飲め」と迫ります。信長は母親の愛情を求めており、マザコンといっても差し支えないかもしれません。ここは、私の好きな場面でもあります。

――やがて年を重ねると身なりも変わり、信長の周辺環境も変化していく。

 信長は権力者となっていきますが、そのピュアさは変わらない。しかしそのままでは危険です。さらに話が進むと、感情のコントロールもうまくできなくなっていくのです。

 第31回「逃げよ信長」では、浅井長政の裏切りを知った信長が金ヶ崎城でブチ切れ、やがて号泣。

 このとき演出の方からの注文は、ただ泣くだけではなく、怒りと悲しみ、悔しさ、自分に対する怒りも混ぜて欲しいというものでした。泣き出すところから泣き終わるまで長回しで撮影したのですが、最後は酸欠になり意識を失いかけました。「麒麟がくる」の信長の面白いところは、キレていたかと思ったらご機嫌になっていたり、ご機嫌だと思ったら泣き出したり、泣いていたかと思ったら喜んでいたり、感情の波が激しいところでしょうか。

 そのため、ワンシーンの中に喜怒哀楽が詰まっているような感情の起伏の激しさというのを心がけています。それは演じていてトリッキーなのですが、やりがいがありますし、楽しいですね。

■承認欲求を満たすため次第に暴走し始める信長

――有力大名へと成長した信長は、やがて天下取りに向け邁進していく。

 信長の理想は「世を平らかにする」ことですが、その真意は「自分がすべてを手に入れたい」「大きな国を手に入れる」というもので、そのベースにあるのが“承認欲求”です。

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信長の承認欲求の原因は…