2月7日(日)の最終回に向けて、ますます盛り上がりをみせているNHK大河ドラマ「麒麟がくる」。その中で織田信長役を演じている染谷将太さんは、「革新的な織田信長像をゼロから構築したい」とのオファーを受けて引き受けたという。一年以上をかけて濃密な一人の人生を演じ切るのは、初めての経験だったという。撮影現場で制作陣と日々奮闘し、新たな挑戦をしている染谷さんに、『歴史道vol.13「本能寺の変と光秀の最期」』(週刊朝日MOOK/朝日新聞出版)で信長に対する思いを語ってもらった。特別に全文公開する。
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■家族の愛情に飢えて、“うつけ”とさげすまれた少年・信長
――織田信長は英雄ながら、暴力と恐怖心で人心を支配しようとした、暴君のイメージが定着している。
私は小柄で、押しの強い男だと思いません。最初オファーをいただいたとき、なぜ自分なのかと思いましたが、話を聞いて台本を読ませていただくと、今まで見たことのない信長がそこにいました。
台本のなかの信長は、純粋でただまっすぐな男。本人は間違えたことはしていないと思い込んでいても、周りから見たらとてもズレている。ある意味現代的なのですが、人々が思い描く信長像からも外れすぎていない。これも、信長だと思えたのです。
――染谷信長の初登場は、斎藤道三の娘・帰蝶と婚姻の年。信長公記によると、天文17年(1548)、信長は14~15歳である。
最初は、うつけとさげすまれた少年時代なので、無邪気に演じることを心がけました。信長は生涯を通じてピュアな漢(おとこ)ですが、そのピュアさと邪気は紙一重ですね。
第9回「信長の失敗」で、川口春奈さんが演じられている帰蝶(きちょう)との婚儀に上機嫌な父・信秀の前に、信長が持参したのは徳川家康の父・松平広忠の首。信長にとって広忠の首は子どもの宝物と同じで、この宝物を父親に見せれば大いに喜んでもらえると思っていたのです。
しかし、その予想に反して父親から叱責を受けてしまいます。