5月11日、品川の東京出入国在留管理局。狭い部屋に閉じ込められ密集して暮らす外国人に、マスクは配られていなかった(撮影:初沢亜利)
5月11日、品川の東京出入国在留管理局。狭い部屋に閉じ込められ密集して暮らす外国人に、マスクは配られていなかった(撮影:初沢亜利)

スナップ写真の質は歩いた量に比例します

 国会前でデモをする人々、入管に収容されている外国人など、スナップ写真の間に政治的な要素や時事的な要素を入れ込むいつものスタイルは変わらない。

 そして写真は「100%横位置」。「一枚の写真の中に人間模様とか、社会の多様性とか、そういうものを瞬時に閉じ込めていこうとすれば、横ですね」。

 写真集のページめくりながら「すごく丹念に写していることが伝わってきます」と、私が言うと、「スナップ写真の質は、歩いた量に比例しますから」と、返ってきた。

「まなざしとしては、ジャーナリズム的というより、社会学的です。社会学的に空間や人々の流れを見ている。2020年の東京の多様な要素を分析するような視線で撮っています」

 一方、「矛盾するようですけど、この写真集のなかでいちばん好きなのは、最初に出てくるモノクロの、画面の右にジョーロが写った写真なんです」。

 シュールレアリスムの作品のような、不思議な感じのする写真で、トリックアートのようにも見える。

「本当はこういう写真を撮りたいんです。見るたびに戸惑いを与える写真。見て感動するっていうのは直線的な感覚だと思いますから。そうではなく、もっと複雑な感情を抱かせたい」

8月15日、靖国神社の参拝者は例年より多かった

 実は今回、写真集の制作に間に合わず、残念に思っている写真があるという。それは8月15日に靖国神社を訪ね、写した光景。

「すっごい人がいたんですよ。例年よりも多いんじゃないか、というくらい。特に若い女の子。ファッションなのか、どういう気分で行っているのか、よくわからないですけれど」

 そんな作品も含めて、年明けに開催する写真展「東京コロナ禍2020」で展示する(写真展情報は文末に)。

「2020年はよく撮ったな、という感じがあります。12月まで撮って、それを1月に展示するのはすごく楽しみなんです」

(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】初沢亜利写真展「東京コロナ禍2020」
Roonee 247 Fine Arts(東京都中央区)で
2021年1月12日~1月24日開催。

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