AERA2020年12月21日号「人気93社の年収調査」から
AERA2020年12月21日号「人気93社の年収調査」から

 世界規模の市場を持ち、「底堅い」とされている鉄鋼・ガラス業界にも、不安の影はつきまとう。増田さんはこう続ける。

「コロナ禍に加えて、世界的には車離れが進み、メーカーは減産傾向です。トヨタは新車販売でも好調ですが、日産はゴーン時代の車種を絞った戦略の反動の他、“お家騒動”が消費者心理にも影響しています。鉄鋼・ガラスのように、部品や素材関連は完成車メーカーの動向に左右されやすい」

「右に倣え」をしがちな日本企業においては、同業他社の動向にも注視したい。人事コンサルタントで『稼げる人稼げない人の習慣』(日本経済新聞出版)などの著書がある松本利明さん(50)は注意する。

「かつて、コカ・コーラが缶コーヒーを値上げした際に周りも動いたように、大手に追随する流れがあります。20年の給与は昨年時点で組み立てられていることが多いので、給与に影響が出るとすれば来年から。大手がベースダウンを始めたら、一気に下がり始めます」

2021年はどんな年になるのか(撮影/写真部・張溢文)
2021年はどんな年になるのか(撮影/写真部・張溢文)

 一方で、業界内でも明暗が分かれている。輸入制限がかかったことで、専門商社の業績は悪化。一方、総合商社では幅広い事業がリスクヘッジとなった。企業価値検索サービス「Ullet(ユーレット)」を主宰するメディネットグローバル社の西野嘉之CEO(工学博士)は、こう見る。

「商品をただ横に流すのではなく、目利き力のある企業は生き残ります。たとえば、アメリカの投資家のウォーレン・バフェットが出資した伊藤忠、丸紅、三菱など5大商社には、伸びしろがあり、企業価値も上がると判断されたのかもしれません」

 終電の繰り上げが取り沙汰されている鉄道業界では、グループ内でも勝ち組と負け組に分かれた。

 JRでは、20年で最も給与が高い東海(736万円)と西日本(662万円)の2社の間で74万円もの差がついた。

 西野さんは言う。

「3社の直近の年収を見ても、西日本は下げ、東と東海は維持しています。ただし、売り上げと利益ともに厚みがある東海と異なり、東は売り上げが減少しているので、来期の給与は厳しくなる可能性もあります。同じJRで働いていても、ずいぶん違うことがわかります」

(編集部・福井しほ)

※AERA 2020年12月21日号より抜粋

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