先行きの見えない日々は続く(撮影/写真部・張溢文)
先行きの見えない日々は続く(撮影/写真部・張溢文)

 20年に各社が提出した有価証券報告書から「平均給与」を抽出し、同じく20年の報告書から「従業員数」「平均年齢」「平均勤続年数」もまとめた。また参考として、平均給与は16年と18年に報告された金額も記した。人気企業のうち従業員数が100人以下は除外。ホールディングスなどの持ち株会社体制の会社では、管理部門の従業員のみが所属するケースが多く、事業会社の従業員を含む会社に比べ平均給与が高くなる傾向があるため、比較の際は注意が必要だ。

右肩上がりの建設業界

 また、今回の調査では、各企業が採用した学生数の多い上位3大学も記載した。金融や商社を早稲田大や慶應義塾大、東京大の学生が占めたり、鉄道には地元周辺の大学が名を連ねるなど、採用面での傾向が見て取れる。給与や就職者数はビフォー・コロナの数値ではあるが、企業の特徴はつかめる。

 たとえば、日本大や近畿大の学生が多い建設業界。東京五輪の開催準備や訪日観光客の急増でホテルの建設ラッシュが続き、大林組や鹿島など建設・住宅の平均給与は近年右肩上がりだ。20年3月期の大林組の売上高は2兆730億円と過去最高を更新し、鹿島も02年3月期以来18年ぶりに2兆円を達成するなど、景気がいい。

 会社のエネルギーは、給与にも反映される。

「建設・住宅」の項目にある8社のうち、大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店の5社が平均給与1千万円以上だ。16年にはいわゆる「1本超え」の企業はなかったことからも、近年、建設業界がいかに血気盛んであったかが伝わってくる。

AERA2020年12月21日号「人気93社の年収調査」から
AERA2020年12月21日号「人気93社の年収調査」から

 東京商工リサーチ情報本部の増田和史さんは、業界の移り変わりをこう分析する。

「東京五輪の再開発需要で建設業は著しく伸びてきました。数年前は金融や不動産が業種別給与の上位でしたが、今や建設が4年連続トップ。確実に潤っています」

 五輪以降も、災害案件やリニア開発などで建設需要はゆるやかに続くと思われた。だが、それもコロナによって動きが読めなくなったという。

「働き方が大きく変わり、テナントやオフィス需要がなくなったという論調もありました。ですが、郊外のマンションや住宅は好調です。コロナがいつまで長引くかによって、状況も変わりますが、建設業界はピークアウトしつつも急激に落ち込むことはないとみています」(増田さん)

底堅い業界にも波及

 川上から川下へ。特定業界が落ち込めば、そこにひも付いた業界にもダメージは波及する。

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