「宝塚に出合ったんです。1回目に見たときは、すごくびっくりして、こんな世界があるんだな、と思ったんです。でも、2回目に見に行ったときには、『私、絶対にここに入る』と言っていました」

 そのときの気持ちをこう語る。

「ああ、これだ、と思って、すごく引き込まれたんです。リアルな舞台に。同じ空間にいて、声がそのまま伝わってきて、オーケストラの演奏が聞こえて。ほんとうに芸術だな、と思ったんです」

 2006年、宝塚音楽学校に入学し、やがてタカラジェンヌとしてデビュー。舞台では約5年間活躍した。

 その後、写真家としての道を目指すのだが、きっかけを聞くと、宝塚で自分自身が撮影されたときのことを語った。

「あっ、私だったらこう撮るのにな、とか思って、ちょっと写真をやり始めたんです。それでいろいろなものを見ていくうちに、写真にはまっていったという感じです。舞台に立つとポスターとかもいっぱい見るじゃないですか、それで、私はこういうポスターをつくってみたいな、とか。ふつうに思うじゃないですか」

「いやいや、ふつうはそこまで思わないですよ」と私が言うと、
「小さいころからすごくこだわりが強くって、自分自身でやったら自分のアイデアを生かしやすいから、やってみようかな、と思ったんです」

 さらに失礼を承知で、こうたずねた。「いま振り返ってみると、宝塚はちょっと寄り道をした、という感じですか?」。すると、「自分の中で宝塚は寄り道という感覚はありません」。

「Two sides of the Moon」から
「Two sides of the Moon」から

■油絵も、宝塚も、写真も「全部つながっている道」

 四方さんにとっては、油絵も、宝塚も、写真も「手段が違うだけで、表現することには変わりがなく、全部つながっている道」だと言う。そして、いまの作品にも大きな影響を与えているという。

 冒頭で紹介した作品「I want to be blurred and faded」では、湖でダンサーを撮影した。

「やっぱり、私は音楽とか踊りに興味がある。人間でしかできない動き、自然の水の動き、そういうものにすごく魅力を感じる。好きなものを組み合わせて撮っている感じですね。ダンスや音楽をやっていたからそういう人たちとコラボすると、どんどんアイデアが湧いてくる」

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「何かやる前に悩んだりはしない」