日本の写真界ではこのような師弟関係を持つと作風が似てくることが多いのだが、四方さんの場合、まったくそれが感じられないどころか、むしろ対極にある。

 その作風の、くすんだ色味も独特だな、と思っていたら、作品撮りにはデジタルではなく、もっぱらフィルムカメラ(ニコンF3)を使用しているという。しかも、わざわざ期限切れのネガカラーフィルムを探して詰めている。

「この色味を出すために、期限切れのフィルムをメルカリで買いまくったり、フィルムをゆでたりしています。フィルムをラップで包んで、テープをぐるぐる巻きにして。期限切れのフィルムはだいたいハイライトがピンク色っぽくなって、シャドーは緑が強くなる。『ぜんぜん思った色じゃない!』とか、ありますけど、懲りずに使っています(笑)」

「flow」から
「flow」から

■小さいころから「アーティストになる」と言っていました

 聞くと、四方さんは幼いころから並々ならぬ色へのこだわりがあったという。

「こっちのピンクはいいけど、このピンクはいやだとか、すごく言ってましたね。4歳のころから油絵をやっていたんですけれど、そのまま出した色は絶対に使わないし、絵の具と絵の具をすごく混ぜて色をつくるんです。誰かに言われたんですが、『絶対音感』の色版、『絶対色感』があるんじゃないか、と思うくらいすごくちょっとした色の違いを言うよね、って」

 四方さんは「本物を見ろ」という両親の教育方針のもとで育った。

「モネが好きだったので、パリのマルモッタン美術館に連れて行ってくれたり、絵画の本もすごく買ってくれました」

 同じように油絵を描いていた祖母の影響も大きいという。

「祖母は絵だけじゃなくて、手を使うことがなんでも上手だったんです。子どもって、すごくまねをするじゃないですか。だから、何かつくりたい、って思っていましたし、小さいころから自分は『アーティストになる』と言っていました」

■「私だったらこう撮るのにな」。写真家を目指して宝塚をやめる

 中学時代はなんとなく、美大に進むことも思い描いていた。しかし、中学3年に進級するころ、その気持ちが一変する。

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宝塚の経験は「寄り道」ではない