
放送開始から6カ月、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」がいよいよ折り返しだ。毎週オンエア後にSNS上を大いにザワつかせる魅力を読み解く。AERA2022年7月11日号の記事を紹介する。
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天から生かされてきた男が、死んだ。小栗旬が主演を務める大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)、第25回「天が望んだ男」でのことだ。
近づく最期を予感して異常な恐怖に陥る源頼朝(大泉洋)。しかし従者の安達盛長(野添義弘)と共に訪れた相模川で、憑(つ)き物(もの)が落ちたような表情で、北条義時(小栗)に、自らの今後について語る。
「人の命は定められたもの。抗(あらが)ってどうする? 甘んじて受け入れようではないか」
そして御所へ戻る道中、頼朝は呂律(ろれつ)が回らなくなり、落馬。駆け寄った盛長は頼朝に対して「佐殿ー!」と叫ぶ。一緒に「佐殿ー!」と叫んだのは、初回放送から欠かさず観(み)ている関西圏在住の女性(40代)。
「頼朝を少年時代からずっと支え続けてきたのが盛長。頼朝の敬称である“鎌倉殿”ではなく、とっさに昔の呼び名“佐殿”で呼びかけるんです。私も叫ばずにはいられませんでした」(女性)

テレビの前で正座状態
ドラマ関連の記事を執筆している芸能ライターの山下真夏さんにとって、「鎌倉殿の13人」は「体感20分」。「クスクス」「ホロリ」「えーっ」「それは!」の連続だ。一言一句聞き逃せないと、毎週テレビの前で正座状態。仕事柄ドラマをたくさん観るため、ザッピングも珍しくないが、「『鎌倉殿』ではそんなこと許されません。なんなら録画を観返し、あれはここにつながっていた、伏線がここにあったと確認するくらい」。
そんな山下さんでも、つらすぎて二度と観られないのが、第15回「足固めの儀式」。佐藤浩市演じる上総広常の最期が描かれた。だれよりも頼朝に忠誠を誓う広常だったが、頼朝は「最も頼りになる者は、最も恐ろしい」と、御家人たちの目の前で広常の粛清を行う。
放送前から小栗らが「出演者全員が認める神回」と予告していたが、山下さん曰(いわ)く「さらに号泣のシーン」が、粛清後。広常の館の鎧(よろい)の中から封書が見つかる。頼朝は「子どもの字か。読めん」。義時が代わりに読み上げた内容は「これから3年のうちにやるべきこと。(略)これすべて、鎌倉殿の大願成就と、東国の太平のため」。