世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。
【写真】タイ・バンコクでは「客と嬢がフェイスガード着用で行為」に及ぶことも
この記事の写真をすべて見る■ターゲット不在の“歓楽街”
本連載ではこれまで複数回にわたり、コロナ禍でのタイの歓楽街についてまとめてきた。その取材のなかでタイ第二の都市・チェンマイに旅行したという現地の友人と話したとき、日本でも始まっている「Go Toトラベル」の話題になった。タイでも日本のキャンペーンと似た国内旅行振興策が始まっている。その影響はどうなっているのだろうか。
「タイ版のキャンペーンはタイ人しか利用できないので、タイ人に人気の観光地ならそこそこにぎわっているようです」
キャンペーンには総額224億バーツ(約780億円)もの予算が打ち出されている。宿泊費や航空券の補助があり、日本のものとほぼ同じ内容だ。国内の旅行需要の喚起という目的も共通している。そしてタイでは、日本のように“東京除外”といったこともない。一見するとキャンペーンは順調なようであるが、現状は異なるようだ。
「バンコクの繁華街や、チェンマイ、プーケット、サムイなど、代表的な観光地は軒並みゴーストタウンと化しています」
友人によると、有名観光地ほどキャンペーンの恩恵がないそうだ。
「外国人が戻ってこないと、それらの観光地に活気は戻らないと思います」
タイの観光産業はこれまで、外国人観光客からの需要で発展してきた。しかし、言うまでもなくコロナ禍で外国人観光客をあてにはできない状況だ。
「もともと国内の観光客に需要があった地域は潤いそうですが、外国人観光客が中心だった場所はうまくいっていないようです。たとえば、バックパッカーの聖地・カオサンは厳しいといった感じです」
国内の観光客に人気の観光地としては、海ならフアヒンやバンセン、山ならカンチャナブリー、カオヤイといったところだ。これらは外国人観光客にはそこまでなじみがないだろう。
また、首都・バンコク近郊のパタヤでは、細かいエリアごとに状況が違うようだ。そこには、タイ人が外国人観光客に人気の場所を敬遠する“ある理由”が浮かび上がる。
「パタヤでも、南側の方のビーチには人出が戻っています。これは、ウォーキングストリート(歓楽街)がなく、売春婦がいないエリアだからです」
一般のタイ人は売春を敬遠する傾向があるためだが、やはり外国人と現地のタイ人とでは、観光に求めるものが違うということなのだ。近年インバウンド需要に力を入れてきた日本の観光地でも、今後同じような認識のズレが起きるかもしれない。(文/丸山ゴンザレス)