一般に公開されていることから、誰でも無料で目にすることができる「決算書」。企業に資金を投資する投資家や融資する銀行員はもちろんのこと、企業の経理企画ポジションや管理職クラスの人など、読む必要がある人は少なくないかと思います。とはいえ、専門用語や数字の羅列が続くため、なんの知識もなく読み解けるという人は珍しいのではないでしょうか。
そこで、キホンのキを学びたいという人におすすめしたいのが『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』です。著者は、「日本人全員が財務諸表を読める世界を創る」を合言葉に、ツイッター上で「#会計クイズ」という参加型のイベントをおこなっている「大手町のランダムウォーカー」氏。ツイッター同様にさまざまなクイズに答えながら、決算書を読む力を楽しく身につけられる一冊になっています。
本書は、架空の企業ではなく、実際の企業の決算書を使っているというのも大きな特徴。
「決算書を読む目的は、企業を分析し、分析をもとに具体的な打ち手を考えることにある」(本書より)
実在する企業の決算書をさまざまな視点で読み解くというのはたいへん実践的。決算書を読む力をつけるための最短ルートだというのにも納得できます。
Chapter1では貸借対照表(B/S)、Chapter2では損益計算書(P/L)、Chapter3ではキャッシュ・フロー計算書(C/S)、Chapter4では「B/S+P/Lの複合問題」といった知識について学んでいくことができます。どのようなクイズになっているのか、一例をご紹介しましょう。
企業が保有している財産(現金や建物など)の残高を記録した「賃借対照表」を説明しているChapter1では、ニトリHD、ファーストリテイリング、良品計画という3社の賃借対照表を挙げ、「ニトリHDの貸借対照表はどれか?」を当てるクイズが出てきます。これは、ニトリは「工場と物流設備を保持していることから設備類である『固定資産』の割合が非常に大きくなっている」「32期連続増収増益のため純資産が厚くなっている」といったポイントから、答えを導くことができます。
ほかにも、セブン銀行、三菱UFJ 銀行、スルガ銀行という3社の貸借対照表から各社のビジネスモデルの違いを見つけたり、ユニクロを展開するファーストリテイリング、ZARAを展開するインディテックス、しまむらという3社の損益計算書から、それぞれの利益に影響を与えるポイントについて考えてみたりするクイズも。私たちにとって身近な企業の決算書を取り上げることで、自然と興味を持てたり、推測しやすかったりするという側面があります。
また、各クイズでは熊のアイコンの「大手町のランダムウォーカー」さん本人をはじめ、営業さん、投資家さん、銀行員さん、学生くんといったイラストのキャラクターたちが会話を繰り広げます。彼らと一緒に取り組むような気持ちで進められるのも、とっつきやすい点と言えるでしょう。
何事も義務感に駆られたり、苦しんだりしながら取り組んでも、なかなか知識は身につかないもの。「とにかく楽しく決算書を読めるようになる」ことを主眼に置いているという本書は、これから決算書の読み方を学ぶ人にとってピッタリな一冊ではないでしょうか。
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