事務所前でパフォーマンスをする乙武洋匡氏
事務所前でパフォーマンスをする乙武洋匡氏
この記事の写真をすべて見る

 渋谷駅から歩いて5分ほどの雑居ビル。著書『五体不満足』で知られる作家・乙武洋匡氏(46)の事務所はわずか4畳半ほどの広さだ。

 今回の参院選(7月10日投開票)では、激戦の東京選挙区で無所属での出馬となるが、SNS上では全国から1500人以上がボランティアに応募したという。事務所の玄関には七夕の笹が飾られ、2ちゃんねる創設者で実業家のひろゆき氏の「楽しく」と書かれた短冊が。わざわざパリから駆け付けたひろゆき氏は、応援演説では「たぶん受からないんじゃないか。でも、こういう人が頑張っているのは面白い」と話したという。

 事務所で七夕飾りをつくっていたスタッフの一人に、ボランティアに参加した理由を聞くと、「いま妊娠しているんですが、会社でマタハラにあった時に偶然、乙武さんの演説を聞いて、働きたくても働けない人に手を差し伸べてくれる人だと思ったんです」。

 事務所を出ると、街の若者たちは「乙武さんじゃん」とスマホをパシャリ。一人ひとりと記念撮影をし、「僕が目指していくのは、いろいろな違いのある方々が調和を成していく社会です」と訴えると、拍手が上がった。

 乙武氏には、過去に苦い記憶もある。2016年の参院選に自民党候補として東京選挙区での出馬を検討していたが、直前に週刊誌で女性問題を報じられ、断念した。

 トラブルは他にもあった。当時、「日本を元気にする会」から出馬する前提で準備が進んでいたが、それを反故にして急遽、自民党からの出馬に転じたというのだ。古くからの乙武氏の友人で「日本を元気にする会」の代表であった元参院議員の松田公太氏はこう振り返る。

「こちらから連絡しても音信不通になり、そのときは本当にショックでしたね。乙武さんに伝えるとしたら、当選して議員になったとしても嘘をついたりブレたりすることがないようにと。例えば完全無所属で出馬して闘いますと言ったのであれば、少なくとも6年間は政党に入らず、最後まで無所属で頑張ってやってほしいと思います」

 当時のことを乙武氏に直撃すると硬い表情で「以前のことは……」と口ごもった。今回の選挙で汚名返上できるか。

週刊朝日  2022年7月15日号