「障害者への差別はいけないこと」だが、差別とは具体的に何かを考え出すとあいまいになってしまう。文学研究者の著者が、差別に抗ってきた障害者の活動記録から本人たちの言葉を拾い上げ、差別に向き合う意味を読み解く。

 著者は脳性マヒ患者の団体「青い芝の会」に着目する。彼らは健常者の慈悲は支配に通じると考え、介助者抜きでのバス乗車を求めてきた。彼らの考える差別解消とは障害者であるまま、皆と同じ社会の中で生きることだと指摘する。

 2016年に施行された障害者差別解消法の背後には思想の蓄積がある。同年に起きた相模原市の障害者施設殺傷事件は、それを根底から破壊する蛮行だったと著者はいう。「誰もが等しく社会参加の権利を持つ」社会の実現をめざすための指針となる一冊だ。(内山菜生子)

週刊朝日  2020年6月26日号