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「構図について教えてほしい」
読者からそう要望が届くたびに、頭を悩ませていました。カメラが進化し、誰でも写真を撮れるようになったいま、「いい写真」を撮るために構図が重要な要素のひとつであるとみなさんが考えるのは当然です。
が、写真家の方々と話をするたびに、語学学習で「多聴多読」が推奨されるのと同じように、写真も、たくさんいい作品を見て、たくさん撮ることこそが、遠回りに見えても上達の近道だと感じさせられてもいました。
では、どうすれば、アサヒカメラらしい構図特集が組めるのか? アカデミックな裏付けのある内容を、これまでとは異なる角度から取り上げたい、とずっと考えていました。
美術大学の入試で構図力が試される以上、絵画には何かしら言語化されたセオリーがあるはずです。名画から構図の基本を学び、写真に応用できないか? そんな相談を、ベストセラー『絵を見る技術』の著者、美術史研究科の秋田麻早子さんに持ちかけて生まれたのが、7月号の特集「構図は名作に学べ!」です。
フィンセント・ファン・ゴッホ、ヨハネス・フェルメール、レオナルド・ダ・ヴィンチ、レンブラント・ファン・レインらの名画と、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロベール・ドアノー、木村伊兵衛、林忠彦、須田一正、星野道夫といった写真家の名作を重ね合わせながら、フォーカルポイント、視線誘導、バランス、配色、比例と配置、という5つのポイントで 、名写真たる所以を解説する贅沢な内容に、知的好奇心が刺激されるはず。
いい写真を撮るには、見る目を養うことが非常に大切です。写真・カメラ好きだけでなく、名画好きにも非常に役立つ史上初の試み、存分にお楽しみください。
そして、第2特集は、写真家に教わるセルフポートレート、つまり“自撮り”。大橋愛さん、浅田政志さん、平間至さんが、それぞれの視点から、奥深いセルフポートレートの極意を明かしてくれました。撮影に出かけるのが難しいときは、自分を被写体に、人を撮るテクニックを学びながら、セットアップの面白さや、自意識との戦いを楽しんでみませんか?
第4回を迎えるSnow Manの向井康二さんと第一線の写真家による実戦形式の連載も、外出自粛下で、自宅でもできるセルフポートレートのレッスンを実施しました。自分の写真は少ないという向井さんが、ハービー・山口さんに教わった5つの要素を生かして、自撮りに挑戦。「見る人の想像力をかきたてる」ために向井さんが撮った写真とは? 読めば、自分でも撮ってみたくなること間違いなしの12ページ。その一枚が、アサヒカメラ最初で最後の裏表紙も飾っています。
さらに、ピンホールカメラや湿板写真で「写真の原点を楽しむ」企画や、梅雨時に機材をカビ・クモリから守る方法など、必読の企画が盛りだくさん。「第5回 岩合光昭さんが審査する アサヒカメラ ネコ写真コンテスト」の審査結果も発表します。
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すでに報じられている通り、「アサヒカメラ」は、この2020年7月号をもって休刊いたします。
1926(大正15)年4月の創刊以来、日本の写真文化とその土壌を未来へ繋ぎたいとの思い、そして、カメラそのものが持つ魅力と撮影の楽しさとを多くの方に伝えたいとの思いから、力を尽くしてまいりましたが、通巻1125号となる今号をもって、残念ながら歴史を閉じることとなりました。
最終号にあたり、ゆかりの深い方々に、本誌にまつわる思い出の写真と言葉を寄せていただきました。赤城耕一さん、荒木経惟さん、石内 都さん、岩合光昭さん、大西みつぐさん、北井一夫さん、椎名 誠さん、篠山紀信さん、鈴木理策さん、土田ヒロミさん、中村征夫さん、英 伸三さん、ハービー・山口さん、水越 武さん、宮嶋康彦さん、森山大道さんの16人が明かすエピソードに、歴史を感じられると思います。名物連載「ニューフェース診断室」を振り返る特集とともにご覧ください。
なお、大変心苦しいのですが、アサヒカメラ写真コンテストも、今号掲載発表分をもって終了させていただきます。ご応募くださっていたみなさまに、年度途中でこのようなご報告をしなくてはならないことを、心よりお詫び申し上げます。次号以降発表分としてお送りいただいた作品は、順次返却させていただきます。詳細は本誌でご確認ください。
94年間、「アサヒカメラ」を愛してくださったみなさま、本当にありがとうございました。