大学入試といえば“一発勝負のペーパーテスト”のイメージが強いが、実はこうした一般選抜で入学する学生はいまや半数以下だ。特に拡大しているのが総合型選抜(旧AO入試)。大学入試にいま何が起きているのか。AERA 2022年7月11日号から「大学」特集の記事を紹介する。
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初対面の4~5人のグループがテーブルを囲み、その場で与えられたテーマをもとに討論を進める。時間は30分。傍らには面接担当者が陣取り、一人ひとりの振る舞いや発言内容を入念にチェックする──。
就活のグループ面接さながらのこのシーン、実は大学の総合型選抜(旧AO入試)で行われている入試メニューの一つだ。
「総合型選抜にチャレンジする学生は大変だと思います。書類でどれだけ上手に自己アピールしても実際の言動を見れば筒抜けですから」
こう話すのは河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員だ。
ペーパーテストで測れない志望意欲や能力を、大学・学部ごとに創意工夫し考案したさまざまな形態の試験で測り、数カ月かけて獲得したい学生を絞り込む。一方の学生は第1志望が原則。
「口先だけでもダメ。一目ぼれもダメ。大学と学生が互いにミスマッチを防ぎながら進路を決める。総合型選抜は究極の“お見合い入試”です」(近藤さん)
文部科学省によると、2021年度の総合型選抜での入学者数は私立は7万1292人、国公立は6629人で、20年前と比べると、私立は4.7倍、国公立は11.5倍に増えている。さらに総合型選抜に学校推薦型選抜を合わせると、私立は58.2%、国公立は20.8%を占め、全体でも一般選抜で入学する学生はいまや半数以下だ。
なぜ近年、総合型選抜が拡大しているのか。そのヒントは、総合型選抜のパイオニアともいえる東北大学にある。
2000年度の工学部、歯学部を皮切りに、09年度以降は全学部で実施。募集人員全体に占める比率は21年度入試で31.6%となり、目標の3割を突破し、「国公立大学で最多比率」(同大入試センター)だ。滝澤博胤(ひろつぐ)副学長は「大事なのは大学に入学した1年目」と強調する。
「1年生修了時の成績と大学での最終成績は強い相関がありますが、入試成績と入学後の成績はそれほど強い相関はありません。つまり、大学入学をゴールと捉える学生と、学びのスタートと考える学生では卒業時に大きな差が出るということ。総合型選抜の強みはここにあります」