関西モダントラムの一翼を担った阪神国道線71型は1937年に登場。「金魚鉢」の愛称を持つ美しいフォルムはファンを魅了した。浜田車庫(撮影/諸河久:1966年8月4日)
関西モダントラムの一翼を担った阪神国道線71型は1937年に登場。「金魚鉢」の愛称を持つ美しいフォルムはファンを魅了した。浜田車庫(撮影/諸河久:1966年8月4日)

 最後のカットは浜田車庫で撮った71型。美しい外観は同時期に製造された大阪市電901型や京都市電600型、神戸市電700型と共に戦前の関西を代表するモダン路面電車の一つに数えられる。1975年5月の国道線全廃時まで稼働していた。

 コラムニストとして健筆をふるい、鉄道専門誌に多く執筆した編集者であり知人の佐々木桔梗氏は、1974年に上梓した『流線形物語』の中で「人間は所詮ムードに弱い、そして形態や外装や宣伝にだまされ易い。(中略)流線形は1930年代の沈鬱な世界的不況時代に颯爽と登場した救世主的名優であった。皮肉っていえば現代人好みの天才的な魔法使いであり錬金術師でもあったのだ」と記述されている。

 コロナ禍のあとには新たな流行がやってくるのか? 時勢を見据えている昨今だ。

■撮影:1964年7月4日

◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。著書に「都電の消えた街」(大正出版)、「モノクロームの私鉄原風景」(交通新聞社)など。2019年11月に「モノクロームの軽便鉄道」をイカロス出版から上梓した。

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