増加する産学共同研究や大学発ベンチャーの陰で、人知れず搾取されている若手研究者の実態をあぶり出している。研究者であると同時に弁護士でもある著者が問題解決に関与した実際の事案に基づいているだけに、ことのあらましを辿るくだりは生々しい。
共同研究とは名ばかりで、試作品製作の「下請け」扱いされている大学研究室。教授の頭越しに企業側から発破をかけられ、無償のオーバーワークを強いられたあげく心を病んでしまう助教や院生。助成金頼みで売り上げが立たず、雇用した研究者に不安定な地位しか与えられない大学発ベンチャー。
一見いいことずくめのアカデミズムの最前線すら、ひと皮むけば闇が広がっている。そこもまた、非正規労働者の増加と無縁ではない。現代社会の歪みに否応なく気づかされる一冊。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2020年4月24日号