雪が舞う福岡県内の山陽新幹線を走る700系(C)朝日新聞社
雪が舞う福岡県内の山陽新幹線を走る700系(C)朝日新聞社

■第一線から次の任務へ~N700系登場

 目まぐるしく変わる社会環境の変化、高速運転に伴う高い負荷などにより、新幹線車両の交代サイクルは非常に早い。東海道新幹線ではカーブ通過速度のさらなる向上が大きな目標となり、山陽新幹線では500系レベルの速度、すなわち時速300キロ運転が望まれるようになった。そこで、それらの両立を目指した新車両・N700系の開発が進められ、2007年に量産車が登場した。

 この新車両は、完成度の高かった700系をベースに、さらなる向上を図ったものと言える。16両編成のうち14両を電動車として編成出力を高め、カーブで車体を傾けて遠心力を抑えることで通過速度を速くできる車体傾斜装置を採用したことなどにより、見事に目標をクリアしていった。

 それにより700系は一線を退き、「ひかり」「こだま」の運用に就くことが多くなり、「のぞみ」運用はだんだんと臨時のみとなっていった。背景には、車両性能やダイヤだけでない「時代のニーズ」も関係していただろう。700系では電源コンセントは限られており、普通車では客席両端の壁面だけだったが、N700系では窓側席すべてに装備されたからだ。スマホの充電やPC作業といったことを車内で行いたい人が増えている今、700系だとハズレと感じる人が少なくなかった。

■700系はやっぱり偉大だった

 こうして700系を振り返ってみたが、東海道・山陽新幹線の歴史の中で700系は名車の一つと言って間違いない。

 何といってもそのシルエットが後の車両に引き継がれているのだから。技術の進歩によって、さまざまな微調整を加えて性能を向上させてはいるが、ベースになっているのは700系なのだ。

 2020年3月8日、ついに東海道からその姿が消えるが、その功績は輝き続けるに違いない。(文/松原一己)

松原一己(まつばら・かずみ)/大阪府枚方市出身。デザイン表札やステッカー制作を手がける日本海ファクトリー代表。趣味で行っていたトレインマークのトレースが高じて、ウェブサイト「愛称別トレインマーク事典」を運営する。著書に『特急マーク図鑑』(天夢人)、『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社・共著)。