己に向き合い、心身を鍛える武術。世界にはまだあまり知られていない武術があり、日本にもそれを広め、極めようとする人がいる。
* * *
■Kalaripayattu(カラリパヤットゥ=インド)
インド南部のケーララ州に伝わる伝統武術。まずは様々な種類のキックと、象、馬、ライオンといった8つの動物のポーズを習得し、木製、鉄製の武具の扱い方を学んでいく。「インドの深い知識と知恵が詰まっており、合理的な武術。年齢や性別を問わず、どんな人でも心身の鍛錬に生かせます」(CVNカラリジャパン・浅見千鶴子さん)
■Savate(サバット=フランス)
フランス革命時のストリートファイトから始まり、貴族の護身術として発展。靴を履いてのキックが特徴で、“手足のフェンシング”とも称される。攻撃の多彩さや攻防の美しさも魅力。「最小限の力で最大限の打撃を与えられます。女性でも攻撃の威力を実感できるところが面白いです」(日本代表の原万里子さん)
■Capoeira(カポエィラ=ブラジル)
ブラジルの奴隷たちが、音楽に合わせてダンスのように見せかけて練習していた格闘技や護身術が発展。攻撃も防御も流れるような円運動が特徴だ。2014年にはユネスコの人類の無形文化遺産にも登録。「とにかく楽しく、体も心も解放する感じ。お互いに影響を及ぼし、自分を向上させていきます。体幹も鍛えられますよ」(須田竜太さん)
■Arnis(アーニス=フィリピン)
フィリピンの伝統武術で、日本では「カリ」という名称が広まっているが、現地では「アーニス」「エスクリマ」と呼ばれている。ラタン製のカリスティックを用いて攻撃と防御を身につけていく。「シンプルだけど複雑。型にはまらない自由さがあります。動きが激しくないので、脳トレのような感覚で楽しんでいただけます」(大原聰さん)
■Systema(システマ=ロシア)
元ロシア軍特殊部隊将校がロシア古来の武術を元に創始したトレーニングシステム。呼吸法を核に、心身のパフォーマンス向上を目指す。「型がなくてクリエーティブ。ロシアの武術というと怖い印象を持たれがちですが、呼吸によって体が自由になると、メンタルや行動も自由になり、生きるのが楽しくなるのが魅力」(北川貴英さん)
(構成・文/吉川明子)
※週刊朝日 2020年3月6日号