実際のレンズ設計はそう単純ではないが、これによって高画質化が実現でき、さらにはレンズ自体の小型化にもつながっている。レンズ設計の自由度も上がり、ニコンの「NIKKOR Z 58ミリメートル f/0.95 S Noct」のような明るいレンズも設計できるなど、ミラーレス一眼の短いフランジバックと大口径化はメリットになるところが非常に多い。
鉄道写真撮影でいえば、超広角~標準レンズは鉄道風景や鉄道スナップ撮影で多用する焦点距離。特に超広角では遠くの景色や列車にピントを合わせても手前の風景も収差が少なく、ちょっと絞りを絞るだけで画面の四隅を見てもディテールがしっかりと出る気持ちのよい作品に仕上がる。さらに高画素機であればあるほど、その解像感の高さと高画質を堪能できるはずだ。
ちなみにミラーレス一眼の中にはマウントアダプターを介して既存の一眼レフなどのレンズが使える機種もある。いまだにマウントアダプターが画質の低下を招いたり、AF速度が落ちているのではという声も聞かれることがあるが、このような人はマウントアダプターに対してテレコンバーターのようなイメージを持っているのだろうと思う。マウントアダプターは一眼レフ用レンズの主点をミラーレス一眼の短いフランジバックに合わせるための筒状のスペーサーにすぎない。またAF速度に差を感じるのは位相差AFと像面位相差AFのAFシステムの違いによるものだろう。どちらもマウントアダプターの影響はないといってよいので、安心して今までの相棒である一眼レフ用のレンズといっしょに鉄道写真撮影の旅をしてほしいものだ。
写真・文=助川康史
※『アサヒカメラ』2020年2月号より抜粋。本誌では「EVF性能」や「ISO感度」などに関する記事も掲載している。