70代女のマウント合戦は、男遍歴なんてものじゃなく夫の軟便、頻尿、無呼吸症候群! やるせなさを念入りに見せつけられるのがたまらない。
一方、夏江の夫・和幸は投資詐欺で老後の蓄え1千万円を失い家出。山あいでギター工房を営む次男の家に逃げ込んだ夫を、夏江は責め立てる。
「誰のせいよ、全部この人のせいじゃない。ずっとこの人の言いなりで生きてきたのに!」
いやもうこの物語どうなっちゃうの? すると、繊細なエリート長男は耐えきれずオエーッとえずき、フリーダムな次男は突然ふんどし一丁でうさぎのダンスを踊り出す。
カオス。そんなカオスがありながらも人生は続くのだ。印象に残るのは次男の言葉。「たいして取り柄のない人がいて、ただ生きてるだけじゃダメなのかな?」
若い頃に見たかなわぬ夢も、ありとあらゆる後悔も失敗も山積みの70歳。でも、どんな人生だって捨てたものじゃない。
改めて老いた自分と向き合う物語。松坂、風間、平田トリオの今の境地にしみじみ浸った。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2022年7月8日号