国内外の人々を惹きつけてやまない京都。その四季折々の魅力を、京都在住の人気イラストレーター・ナカムラユキさんに、古都のエスプリをまとったプティ・タ・プティのテキスタイルを織り交ぜながら1年を通してナビゲートいただきます。愛らしくも奥深い京こものやおやつをおともに、その時期ならではの美景を愛でる。そんなとっておきの京都暮らし気分をお楽しみください。
* * *
■晩秋の紅葉から初冬へ 京のクリスマス
12月に入り、御池通の街路樹の落ち葉をサクサクと踏みしめながら歩くのが楽しい時期。遅めに紅葉が始まった樹々が紅く染まり、中旬頃まで晩秋の風景を愛でることが出来ます。そして、少しずつ静けさをとり戻し、ようやく京都らしい落ち着きを感じられるので、のんびりと過ごしたい方にはおすすめの時期でもあります。
和のイメージが強い京都も12月を迎えると、あちこちでイルミネーションやツリーの飾りが輝きはじめます。クリスマスやご挨拶のギフトシーズン、贈り物や相手のことを思い巡らす時間も、とても大切なのではないかなと思います。地元の人にも旅人にも、いつも温かく気取りなく、昭和の時に戻ったような懐かしさにほっとする「喫茶チロル」は、そんな時間を過ごすのにぴったりな場所です。今回は、レトロ喫茶で過ごしながら、クリスマスシーズンにぴったりな小物と合わせてご紹介します。
■地元から愛され続けるレトロな喫茶 懐かしい玉子サンドの味
二条城のほど近く、神泉苑の西側角に1969(昭和44)年から佇む「喫茶チロル」は、いつも元気いっぱいに朗らかな笑顔と声で迎えてくださるお母さんの秋岡登茂(とも)さんと、父の代から受け継ぎ、厨房を切り盛りする二代目店主の誠さんが家族で営まれています。
木造二階建て、赤と黒のテント、窓の鎧戸(よろいど)や、くるんとした窓鉄柵の装飾……初めてお店の前を通りかかった時、その佇まいに胸がキュンとしてしまったことを今でも覚えています。店内は、山小屋風の空間に、使い込まれてきた小ぶりの木のテーブルと椅子が並び、常連さんのおしゃべりも小気味良く、レトロで懐かしい雰囲気です。名物のカレーの次に人気の玉子サンドは、私にとって定番メニューです。ふんわりしっとりの食パンに、薄切りのきゅうり、中はとろりとした出来立てのあたたかい玉子焼き。口に頬張ると何とも言えない幸せな気持ちに包まれるのです。普通サイズは、男性が満足出来るぐらいボリュームたっぷりなので、女性にはハーフがおすすめ。いつも一緒に頼むのは、コクがあって懐かしい味のミックスジュース。気取りない温かな雰囲気と味わいに、身も心もほっと和みます。