ひと口にスナップ写真家といっても、撮影対象は幅広い。人や顔にレンズを向ける作家がいれば、主にモノや光景にフォーカスする人もいる。「私写真」として日常をスナップする写真家がいれば、「社会」に目を向けて国際紛争を撮影する人もいる(作図/飯沢耕太郎 ※本誌2017年11月号「スナップ写真の世界はこうなっている!」から再録)
ひと口にスナップ写真家といっても、撮影対象は幅広い。人や顔にレンズを向ける作家がいれば、主にモノや光景にフォーカスする人もいる。「私写真」として日常をスナップする写真家がいれば、「社会」に目を向けて国際紛争を撮影する人もいる(作図/飯沢耕太郎 ※本誌2017年11月号「スナップ写真の世界はこうなっている!」から再録)

「警察を呼ぶ」「データを消せ」。カメラを手にして歩いているだけで不審者扱いもされかねない時代。路上スナップ撮影を怖いと思っている人は少なくありません。もしも実際にトラブルに直面したら? 回避策は?『アサヒカメラ11月号』では、「スナップは怖くない」と銘打ち、8人の写真家が明かす設定や極意から、路上撮影トラブルの実践的対応術までを72ページに渡り大特集。

 前回の記事「アンケート事例を検証、スナップ撮影『トラブル』解決術」に続き、今回は、「スナップはすべての写真の基本」と語る写真家の大西みつぐさんが解説する“いまさら聞けない”スナップ撮影の基本編「心構え」をお届けします。
 
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 ぼくはこれまで、いち写真教員として、多くの学生にスナップ写真を学ばせてきた、というより、写真の基本としてスナップショットを学ばせてきました。

 もう30年も前の話ですが、写真学校の新入生に、写真技術の基礎トレーニングとして街に出ましょう、スナップ写真から始めましょう、ということで、まず東京・浅草の三社祭に連れていく。

 右も左も360度、人人人。ぐわっと集まった人の群れはすごくて、その群れの中に入ってみよう、たくさん撮ってみよう、というわけです。

 そこで技術的に学ぶことはとても大きくて、スナップ写真を撮るためというより、写真の基本的な約束事を体で学んでもらいます。3メートルってこういう距離なのか、どうやったらピント位置や被写体との距離を保てるのか、絞りが開放、f11だったら被写界深度がこのくらい、シャッター速度で被写体の動きを制御していくとか。

 いまはAFで撮らせていると思いますが、AFでも自分が合わせたいところにピントを合わせるのはやはり難しい。たとえ合ったとしても、100%撮れるか、というと、たぶん撮れない。

 そんな街頭でのスナップを通しての撮影技術の基本、結果として写らなかったことの確認、なぜそうなったのか?あるいは写ったことの成果、安定感が得られるまで繰り返し教える。ぼくだけでなく、土田ヒロミさん、鈴木清さん、渡辺兼人さんもそうだったと思います。ある程度厳しい授業だったといえます。だからこそ多くの写真家のスタートラインになった。

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昔の方を基本とした、新しい型が生まれている