浦和の現役進学率は「県内でも低いほう」と大山教頭。競歩や遠泳など運動にも力を入れていることもあり、中学生の保護者からは「浦和体育学校」「ほったらかし学校」などと揶揄されることもあった。
「私たちは全人教育を掲げています。決して効率の良いものではありませんが、自走できる生徒を育てたい」(大山教頭)
その理念を貫きつつ、高2の中だるみの時期に受験準備の講座を開いたり、同校OBで作家の佐藤優さんが週1回、5人前後の生徒たちを前に読書法の特別講座を開くなど、浦和は改革を遂行。19年には、過去10年間で現役進学率が最も高い4割超え。成果が表れた。
しのぎを削り、躍進する埼玉の高校。その余波は東京をはさんだ神奈川にも影響する。早稲田アカデミーの千葉さんは言う。
「湘南新宿ラインから始まった鉄道網の発達、さらに上野東京ラインができたことで、神奈川県から栄東など埼玉の高校に行く生徒が増えています」
かつて「つくばエクスプレス」が開業したときも、茨城から都心部への流出が増えたと囁かれた。交通網の発展は高校の序列を大きく変える要素だ。
そんな中、神奈川で実績を伸ばしているのが中高一貫校の聖光学院だ。卒業生数が231人ながら、東大に93人、一橋大に15人、早稲田大に208人、慶應大に141人の合格者数を叩き出した。
「最低でも早慶だと言い切っています」
そう話すのは、同校の工藤誠一校長だ。04年の校長就任以来、教員にはもちろん、親や生徒たちにも意識して合格実績を公言してきた。
「ご両親が気にされるのは、やはり進学先。当然のことで、だからこそ早慶を担保するし、それに見合う指導をしなければいけない」(工藤校長)
東大合格者数が躍進したのも、工藤校長就任時に入学した中1生が卒業する10年入試だ。それまで50人を超えなかった合格者が65人になった。その後も70人前後をキープし、今年はついに93人。全国4位に躍り出た。
教育評論家のおおたとしまささんは、同校の躍進をこう見ている。