カメラの急な動きは、手ブレにつながるので、できる限り避ける。慌てずゆっくり選手を追おう。追い続けられなくなったら、いったんシャッターボタンから手を離して一呼吸置いてから、次のプレーに合わせたほうがいい。

 ピントが合っていても、ブレていては台なしだ。手ブレを防ぐには、まず、シャッタースピード1000分の1秒以上を確保したい。昔は500分の1秒でも撮れたものだが、最近は、カメラが高画素化しただけでなく、選手たちの絶対的なスピードも上がって、わずかなブレも写りやすくなってしまった。

 シャッター速度を稼ぐために、絞りは開放に。それでも適正露出にならない場合は、ISO感度を上げる。カメラの性能が上がり、ISO感度を上げても以前ほど画面が荒れることがなくなったので、僕は、日中や明るい場所では100~800ぐらい、ナイターや屋内などの暗い場所では高感度3200~6400ぐらいで撮ることが多い。

■決定的瞬間を狙うなら 手持ち撮影が望ましい

 試合中はずっとファインダーをのぞき、被写体の上半身中央をAFポイントでしっかり追いかけ続けながら、シャッターボタンを半押しにしたままチャンスを待つ。決定的瞬間を切り取るため、僕は一脚を使わず、手持ちで撮影する。カメラを固定すると、上下左右への動きに制限が出てしまうからだ。カメラをしっかりホールドし、下半身は動かさず、腰を支点にして上半身全体を滑らかに左右に振って被写体を追うといい。

 とはいえ、望遠レンズは重い。ずっと手で持っているのがつらい場合は、一脚を使ってもいいと思う。ただ、ラグビーW杯のような国際大会では全席埋まる可能性が高いから、まわりの観客に迷惑をかけないよう、一脚や長いレンズを使う場合は注意してほしい。

跳ね上がる水しぶきを点として写したいと思い、足元だけを切り取って、1250分の1秒で撮影した。暗かったのでISO感度を4000まで上げている(撮影/水谷たかひと)
跳ね上がる水しぶきを点として写したいと思い、足元だけを切り取って、1250分の1秒で撮影した。暗かったのでISO感度を4000まで上げている(撮影/水谷たかひと)

■光や雨なども生かす

 スポーツは基本的には順光で撮る。全体に光も回るし、シャッタースピードを稼ぐための明るさも確保できるからだ。とはいえ、天気やスタジアムの向き、攻防の方角は選べない。逆光や斜光を生かすことで、他の人とは違う写真を撮ることができる。一般的には残念な雨も、上手に写し込めば、写真のスパイスになる。シャッター速度を500分の1秒以上に上げると雨は点として写り、125分の1秒から250分の1秒くらいで撮ると線として写る。さらに速度を落として30分の1秒くらいにすると白く煙って、スクラムを組んでいるときなど、被写体が止まっていれば面白い視覚効果が生まれる。

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