何にせよ、自分が何を撮りたいのかを判断して、意識して選ぶことで、バリエーションのある写真になる。

 集団スポーツでは、必ずしもアップの写真だけが素晴らしいわけではない。ラグビーは1チーム15人だから、ピッチには30人もいる。タックルなどのコンタクト(接触、ぶつかり合い)も多いから、対戦相手の選手が写り込んでいるのもラグビーの醍醐味。必死で追いつこうと走ったり、止めようとして手を伸ばしたりする対戦相手の動きや表情を同じフレーム内に入れると、ぐっと場面が生きてくる。

■低速シャッターによる表現

流し撮りは背景をブレさせることでスピード感を演出するスローシャッターの手法。被写体の向きとスピードに合わせて、カメラを水平に動かすのがコツ。30分の1秒で撮影(撮影/水谷たかひと)
流し撮りは背景をブレさせることでスピード感を演出するスローシャッターの手法。被写体の向きとスピードに合わせて、カメラを水平に動かすのがコツ。30分の1秒で撮影(撮影/水谷たかひと)

 上の写真は流し撮りの手法で撮った。ピントを1点に、この場合は中央の田中史朗選手に置き、選手が動くのと同じ方向にカメラを水平にふって、スローシャッターを切っている。ラグビーのように選手が縦横無尽に動くスポーツにはスローシャッターは不向きだが、横に一列に並び、一斉にダッシュするという、練習中だからこその一枚だ。

 試合中にスローシャッターを使いたいなら、ブラし写真に挑戦するのもアリだと思う。ブラし写真は、色や背景で遊ぶ、いわばイメージ写真。どこにもピントが合っていなくてもいい。

 でも、流し撮りにしても、ブラし写真にしても、基本的な写真がしっかり撮れるようになってからチャレンジしてほしい。偶然に撮れたものは、テクニックとはいえない。

■ラグビーを撮るコツ

 ラグビー撮影で狙うべき瞬間は、やはり迫力があって、美しいトライのシーン。スポーツは何のジャンルでも、ルールがわかっているのといないのとでは、撮影できる写真に雲泥の差が出る。

 たとえば、ラグビーではボールを前に投げられないと知っていれば、次に誰にパスを出すかが予測しやすくなる。ボールを追いかけているだけでは、どうしても後手後手になる。この場面ではパスを出さずに自分で突っ込むだろうとか、プレーの流れを予測し、それがうまく当たれば、決定的瞬間につながる。

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