わが子に限らず、誰か溺れそうな人を見つけたときに周囲が取るべき行動は次の3つだ。

 1.119番通報(水遊びに行く際は、GPSをオンにしておく)
 2.「浮いて待て」と大声で指示を出す
 3.ペットボトルやリュックサック、ランドセルなど、浮力体になるものを浮いている人の近くに投げる

 海上の沖合でない限り、水難時の緊急通報先は119番だ。全国の消防署には水難救助隊が配置されており、通報から平均8分間で現場に到着する体制が整備されている。水難学会をはじめ「浮いて待て」を指導する側が、少なくとも10分間は続けようと呼びかける理由がここにある。

 わが子がぷかぷか浮いている姿を見ているだけ、というのはつらいだろうが、素人が救助できるほど水難事故は甘くはない。浮力体を投げ入れた後は、「ここにいるからね。空気が漏れるから返事はしなくていいよ。もうすぐ救助の人が来るから、がんばって浮いて待っていてね」と声をかけ続けることが親にできる最善の手になる。

●親子で「浮いて待て」教室へGo!水害、水難への対処法は生活技術

日本は世界で6番目の海岸線を持つ海洋国家だ。河川や湖沼、ため池や用水路も各地に存在する。さらに、この数年は異常気象の影響で水害が増加し、1年を通して水難リスクがあるといっていい。「浮いて待て」の知識と実技は、日本の住民なら誰でも身につけておくべき生活の技術なのだ。

 この夏も水難学会の指導員や水難救助隊員による「親子の『浮いて待て』教室」が各地で開催されている。自治体のホームページなどをチェックして、子どもと一緒に講習を受けるといいだろう。思い切ってスーツと革靴の通勤スタイルで水に落ちてみるといいかもしれない。服と靴の浮力を実感できるはずだ。

(井手ゆきえ:医学ライター)