「食」が過去から現在へと至る中でどう変遷してきたか、今後どう変わりうるかを、進化論のダーウィニズムを取り入れた中立的な視点で論じている。いいか悪いかではなく、結果として何が求められるかが本書の主題だ。

 人間にとっての「食」は、単なる栄養補給の手段ではない。特定の思想や宗教などを背景に、いかに食べるか、誰と食べるかといったことが常に問われている。

 来たるべき食糧難を見据えて国連食糧農業機関が推奨する昆虫食、動物を殺すことなく手に入る細胞培養肉、はたまた必要な栄養素を吹きつけて料理を自在に造形する3Dフードプリンタ。こうした未知なるものが控えている未来に、我々はどう向き合っていけばいいのか。

 日常の中に溶け込んでいる「食」への意識を、否応なく高めさせられる。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年7月26日号