ファーウェイのハイエンドスマートフォンHUAWEI P30 Proが日本でもNTTドコモから発表された。ただ、米政府との関係悪化により、米国企業がファーウェイへ輸出するときには米商務省産業安全保障局の承認が必要になり、事実上の禁輸となっている。NTTドコモも5月22日の段階で予約を停止しているが、「影響を確認しているところで、今夏の発売の予定は変更していない」(広報部)という。昨年のZTEへの米政府による制裁では、ドコモも既存端末の販売を停止したが、3カ月後に制裁が解除されると販売も再開している。今回も同様の状況になることを想定しているとみられ、制裁解除で販売にこぎつけたい考えだろう。
なお、兄弟モデルのP30やP30 lite(いずれもSIMフリー端末)は、すでに販売が開始されている。P30 Proは唯一無二のカメラ性能を備えている端末であり、今後安心して使える環境になってくれることを期待したい。
P30 Proは、従来モデル同様ライカカメラ社との協業によるレンズを搭載している。今回は、超高感度撮影に対応したのが大きなトピックだ。通常のコンパクトデジタルカメラを超える撮影機能を手に入れて、スマートフォンカメラとしてさらに強力な製品に仕上がっている。
採用されているレンズは、LEICA VARIO-SUMMILUX-H 1:1.6-3.4/16-125 ASPH.で、従来どおりファーウェイ向けのHがついたズミルックス名のズームレンズだ。実際には三つのカメラを搭載していて、カメラを切り替えて疑似的なズームレンズとして扱われる。メインとなるカメラは27ミリ相当(35ミリ判換算)F1.6。それに超広角レンズとして16ミリ相当F2.2、望遠側が125ミリ相当F3.4。望遠カメラがメインカメラの約5倍となる焦点距離だ。前モデルが3倍(80ミリ相当)だったからより望遠に強くなった。望遠側のカメラは新たに屈曲光学系を採用し、スマートフォンの厚み方向ではなく幅方向に納めている。これにともなって、超広角16ミリ相当から、デジタルズーム併用で1343ミリ相当の撮影が可能になり、月が写せることもアピールされている。
また、4000万画素の27ミリ相当のメインの広角カメラの撮像素子は1/1.7型で、かつては高級コンパクトデジタルカメラで使われていたサイズ。さらにRYYBというカラーフィルターを採用している。一般的なRGB(RGGB)のベイヤー配列に対して透過率が高く、RとGの成分が得られるYのフィルターを採用することで、感度が40%以上も向上したという。もともとPシリーズでは感度の高いモノクロセンサーを利用していたが、同等の性能が得られたということで今回はRYYBフィルターのカラーセンサーのみとなったようだ。なお、超広角16ミリと、望遠125ミリのほうは、一般的なベイヤー配列で、より小型のセンサーだ。
ISO40万9600という超高感度に対応。レンズ交換式並みの数値だが、画素混合などの画像処理を駆使したもののようで動作にクセがあるものの、とにかく写る。体感したことがなければ驚くレベルだ。少なくともスマートフォンカメラとしては圧倒的。従来どおり、連写合成などを駆使して手持ちで撮影できる夜景モード、新たにToF(トフ/深度測定)カメラを搭載したことで、アパーチャやポートレートモードでは、より正確に背景などをボカせるようになった。現時点でのスマートフォンカメラとしてトップクラスの機能を備えている。
写真・文=小山安博
※アサヒカメラ2019年7月号から抜粋