しかし、後ほど別のビデオが浮上し、この騒動の前に黒人グループが男子高校生たちに向かって人種差別的な発言を投げかけ挑発していて、その状況を鎮めようとして先住民のグループが割って入ったということがわかった。その際にカメラがたまたまとらえた映像が「挑発的な笑みを浮かべる白人の高校生と先住民の男性が対峙している」というように見えただけだという。騒動直後には謝罪した高校側であるが、その後に独立調査機関の「生徒側に差別的、攻撃的な言動は見られなかった」という調査結果を発表した。
「(主流メディアは)すべてを知っているふりをすべきではないし、もっと公正な報道をしてほしい」。そうアンドリューさんは語った。
そんなアンドリューさんが好んで観ているのが米ケーブルテレビ局の「FOXニュース」。大学から自宅に戻ると欠かさず夜の8時から始まる「タッカー・カールソン・トゥナイト」を視聴する。この番組は保守派のニュース・キャスターが様々なゲストを呼んで、二、三の時事問題を1時間ほど議論していくというプライムタイム(19~23時のテレビ視聴率が最も高い時間帯)のトークショー。番組では共和党、トランプ大統領寄りの内容が目立つ一方、他のテレビ局でリベラル派とされるCNNやMSNBCなどの主流メディアへの批判も目に付く。
保守系のニュース専門局として知られるFOXニュースは、2002年に日本でもなじみの深いCNNの視聴率を抜いて以来17年間連続でケーブル・ニュースの中で最高の年間視聴者数を誇り、アメリカでは不動の地位を築いている。
しかし、FOXニュースが「主流メディア」の一員と見なされることはあまりない。その理由をワシントン・ポスト紙のメディア評論家エリック・ウェンプル氏は、自身のコラムの中でこう説明している。
「(伝統的な)新聞には事実に基づいた取材記事と意見欄がきちんと分かれて書かれている。FOXニュースはその両方をごっちゃにしてしまっている。プロの報道機関であれば、事実と意見をきちんと分けなければいけないというのはジャーナリズムの基本的なルールである」