首都ワシントンに本部を構えるピュリツァー危機報道センターのインディラ・ラクシュマナン編集長は「(2016年の大統領選において)トランプ氏は保守系メディアを通して嘘の情報を流し、地方などの一部のアメリカ国民の中にある主流メディアに対する不信感を自分の都合のいいように利用しました」と語る。

 その最たるものが、トランプ政権で首席戦略官も務めたスティーブン・バノン氏が元会長の保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」である。カリフォルニア州ロサンゼルスに本社を置くこのサイトは「極右メディア」とされているが、ハーバード大学の研究によると、2015年の4月から2016年11月の大統領選までに保守系メディアの中で最もSNS上でシェアされたニュースサイトという調査結果が出ている。大統領選キャンペーン中はトランプ氏支持の先鋒として、「ローマ法王がトランプ候補を支持」や「ワシントンにあるピザ屋を拠点にヒラリーとその幹部たちが児童売春に関与」などとトランプ氏に有利な偽りの情報を拡散した。前回の大統領選ではこのようなメディアの活躍がトランプ氏当選の後押しをしたとラクシュマナン編集長は指摘する。こうした保守系メディアと主流メディアの分断はアメリカ国民の中のメディア不信をさらに煽ることとなる。保守系メディアが自分たちの都合のいいように事実を歪曲して伝える傾向にあるのは事実であるが、それを受け取る保守派の人々にも言い分がある。

 ニューヨーク市内の大学で経済学を専攻するアンドリュー・ベレザンスキーさん(20)はブルックリン生まれの生粋のニューヨーカー。

トランプ大統領を支持するアンドリュー・ベレザンスキーさん
トランプ大統領を支持するアンドリュー・ベレザンスキーさん

 民主党寄りのリベラル派が多い街で数少ないトランプ・サポーターである。昨年大学内でトランプ大統領を支持するサークルを立ち上げたところ、まわりの学生からは「人種差別主義者」や「ナチス」などと罵声を浴びせられた。

 彼がトランプ氏を支持する一番の理由は、不法移民の流入を食い止めるために大統領が提案している「メキシコ国境の壁」建設に諸手を挙げて賛成しているからだ。アンドリューさんの両親は中央アジアのウズベキスタン共和国の出身であるがユダヤ系で、イスラム教徒が多数を占める祖国では迫害を受けてアメリカに難民として移住してきた。祖国での迫害を逃れ、アメリカ国籍を合法的に取得した両親の苦労話を聞いて育ってきたアンドリューさんは、きちんとした手続きを踏まずに不法にアメリカに入国してくる移民たちに納得がいかないという。

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