読者の皆さんからの一般投票で決まるのが「あなたが選ぶベストカメラ賞」で今年で12回目になる。そのうち8回はニコンで、圧倒的な強さを誇る。1回はキヤノンで、2回はオリンパスだ。
今年はオリンパスのOM-D E-M1Xがユーザーのハートをつかんだ。3回目の受賞である。E-M1 MarkIIの撮像素子はそのままに、画像処理エンジンを二つ搭載し高速処理を実現するとともに、バッテリーグリップを一体化し縦位置でも横位置でも変わらない操作性と撮影可能枚数増を実現している。ディープラーニング技術を使った被写体認識のAFだったり、複数枚撮影し合成するハイレゾショットを手持ちで対応したり、ファインダーで長秒露光を確認しながら撮れるライブNDなど、新機能も少なくない。
投票理由を見ると、もちろんオリンパスファンという方も少なくないのだが、MarkIIと比べて向上した性能や、追加された機能に魅力を感じている人が多かった。一方で、大型化したことに対してネガティブな反応は少ない。LUMIX S1Rでもそうだったが、大型化の意図が伝わっていれば、小型化を望む日本人であっても受け入れられるのかもしれない。なおオリンパスは、大賞/レンズ賞/あなたが選ぶベストカメラ賞/記者クラブ賞のいずれかの賞であれば2014年から6回連続での受賞になる。
なお次点はここでもニコンZ 7だった。得点は非公表なのだが、決して小さくはないものの大きな差はついていなかった。
すんなり決まった カメラ記者クラブ賞
リコーGRIIIと、レンズ賞を惜しくも逃したタムロン 28-75ミリメートル F/2.8 Di III RXD(Model A036)に、カメラ記者クラブ賞を贈ることにした。
この賞は、カメラ記者クラブの担当者の合議で決める。多数決ではなく、「あれがいい」「こっちがいい」「それならこっちだ」と意見を言い合い、とりあえず全員が(多少不満があったとしても)納得するまでやりあうものだから、例年決めるまで非常に時間がかかる。
しかしである。今年はすんなり決まった。一応、選考委員全員にカメラ記者クラブ賞がどれがいいか、推薦をしてもらい、それを参考にしている。それをホワイトボードに書き出している時点で、ほぼ決まっていた。
大賞の投票でGRIIIに1点も入れてない人でも、記者クラブ賞に推薦する人は多かった。GRIIIはAPS-Cの撮像素子を搭載した、いわゆる高級コンパクト機だ。広角単焦点レンズを搭載したポケットに入る大きさというフィルムカメラ時代からのコンセプトは、デジタル時代になっても継承された。GR DIGITAL IVまでは1/1.7型程度の撮像素子が使われていたこともあったが(それでも大型なほうだった)、2013年に発売されたGRからAPS-Cサイズになっている。デジタルカメラになってからのレンズは共通して28ミリ相当(35ミリ判換算)の画角だ。その3代目となるGRIIIでは、ほぼすべてが一新された。ボディーサイズは小さな撮像素子だったころに近くなり、その代わりに内蔵ストロボはなくなり、ボディー内手ブレ補正が付き、レンズ固定式でありながらゴミ除去機能を搭載した。レンズ固定式でも、センサーにゴミはつくし、固定式ゆえにメーカーでレンズを外して清掃することになる。毎日のように持ち出すカメラだからこその対応だろう。また、動作もキビキビし、操作性も向上した。カメラ記者クラブとしても、こうした完成度の高さについて、賞の贈呈を決めた。