東京は半蔵門にあるJCII(日本カメラ財団)の会議室。カメラ記者クラブ加盟媒体担当者10人が、カメラグランプリの開票作業をしていた。残るは2人分。この時点でパナソニックLUMIX S1RとニコンZ 7が同点。どちらが大賞となってもおかしくない状態だ。まずLUMIX S1Rに7点が入る。まだわからない。しかし、最後の投票用紙にZ 7の文字は見えたものの6点だった。
大賞に選ばれたのはLUMIX S1R。1点差だ。ここまで接戦になったのは昨今では珍しい。第1回でニコンFAとオリンパスOM-4が決選投票になったが、それ以降そうした話は聞かない。
カメラグランプリは、前年4月1日から当年3月31日までに発売された製品を対象にしている。今年はまさにフルサイズミラーレスの年だったといえる。8月23日にニコンがZシリーズで35ミリ判フルサイズミラーレスに参入、その13日後の9月5日にはキヤノンがやはり新マウントでEOS Rを、ドイツで開催されたフォトキナ開催前日の9月25日にはパナソニックがLUMIX Sシリーズの開発発表をする。ニコンとキヤノンは新マウントで、パナソニックはライカLマウント(デジタル用のバヨネットマウントで、バルナックライカのスクリューマウントとは異なる)を採用した。
今回大賞に選ばれたLUMIX S1Rは、レンズ3本とともに2月14日に正式発表、3月23日に発売された。2420万画素のS1と、高画素機の4730万画素のS1Rの2機種だが、撮像素子の違いによる性能差と動画性能の違いを除けば、基本的に同一だ。今回選ばれたのは、より静止画性能に特化したS1Rのほうだ。
選考委員の投票理由を見ると、その完成度の高さを評価する声が多い。高精細かつ高画質でありながら他社とは違った絵づくりだったり、約576万ドットで見やすい電子ビューファインダーだったり、余裕を持った操作性だったり。フルサイズミラーレス機にしては大柄のボディーだが、それすらもこのカメラを実現するには不可欠な要素として好意的に受け入れられたようだった。最初からプロ向けの最上位機として登場という、同じ35ミリ判フルサイズミラーレス機でもニコンやキヤノンとは違うアプローチだ。昨年のフォトキナで筆者はパナソニックのデジタルカメラ部門の事業部長の山根洋介さんにインタビューしているが、プロに使ってもらうカメラをずっと作りたかったと熱っぽく話していた。その出し惜しみはしない開発コンセプトもまた評価されたのだろう。
小型化に有利なマイクロフォーサーズと、35ミリ判フルサイズという二つのラインアップは、APS-Cと35ミリ判フルサイズのそれと比べ差別化という意味でもわかりやすい。今後は、よりエントリー寄りのモデルの展開もあるようなので楽しみだ。なお、パナソニックの大賞受賞は今回が初となる。
なお次点には先述のようにニコンZ 7。それに続くオリンパスのOM-D E-M1Xは、プロカメラマンなど本誌をはじめとするカメラ誌で撮影や執筆をする外部選考委員での評価が高かった。