オムロングループが2021年度から始めた「異能人財採用」で入社した大学院卒の発達障害のある男性。ソフトウェア開発を担当している(写真:オムロン提供)
オムロングループが2021年度から始めた「異能人財採用」で入社した大学院卒の発達障害のある男性。ソフトウェア開発を担当している(写真:オムロン提供)
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 発達障害人材を活用できていないことによる国内の経済損失は年間2.3兆円──。昨年そんな推計が公表された。企業側も、特性を生かして事業に貢献する人材を確保しようと、取り組みを始めている。2022年12月19日号の記事を紹介する。

【図】発達障害人材の未活躍による日本の経済損失は?

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「ダイバーシティー」といえば、従来は“弱者救済”的な意味合いが強かったが、そうではなく、さまざまな知識や経験、視点を持つ人がいることでイノベーションが起こり、企業価値が向上する、そうした考え方が主流になりつつある。

 米アクセンチュアのレポート(※)によれば、障害者雇用とインクルージョンにおいて傑出している45の企業は、他の企業と比べて4年間の平均売上高が28%、純利益がおよそ2倍、利益幅が30%ほど高い結果が示されている。

■サポートで生産性上昇

 また、野村総研が昨年3月に発表したレポートでは、発達障害人材を活用できないことによる国内の経済損失は年間2.3兆円という推計が発表された。うち労働関連の経済損失は1.7兆円。低年収や、非就業・休業、生産性低下による損失を換算したものだ。さらに、職場に発達障害に関するサポートがある場合は、ない場合に比べて生産性が34ポイント上昇することも同レポートで報告されている=同グラフ。

 こうした人材を積極採用し価値創造につなげようと、電気機器メーカーのオムロングループが昨年度から開始したのが「異能人財採用プロジェクト」だ。

 大学院レベルの高度な専門スキルを持ちながらも、発達障害の特性によって就職活動や働き方に不安を持つ学生に門戸を開き、研究開発の主力業務で通常の採用枠とは別に選考し採用するプロジェクトだ。就労移行支援のKaienが立ち上げからパートナーとして参画する。初めての試みとなった昨年は17人のエントリーがあり、うち3人が3週間のインターンシップに進み、1人が4月から働き始めているという。

 オムロンエキスパートリンクで同プロジェクトを担当するダイバーシティ&インクルージョン推進課の瀬川明子さんはこう説明する。

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