文筆家の能町みね子さんがこよなく愛する小町ちゃんは、ミケトラのメス猫。おしゃべりで甘えっ子の秋田美猫だ。2歳で能町さんの元へやってきた。夫にも見せたことがない愛情深い表情で、能町さんは小町ちゃんとの日々を慈しむ。
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ミケトラのメス、小町ちゃん(5)が、はるばる秋田県から東京にいる能町みね子さんの元へやってきたのは、2019年12月5日。能町さんは、お見合い写真を見たときから「世界一かわいい!」と、その愛らしさに胸を撃ち抜かれていた。
そして、迎えに行った日の電車のなかでのこと。キャリーバッグの網ごしに小町ちゃんがぐりぐりとおでこを能町さんの手に押しつけてきた。網目からはみ出す毛の柔らかさ、顔を押しつけてくる圧がたまらない。
その瞬間、「私は、産んだ! この子を!」という電撃が能町さんを貫いた。同時に、「秋田出身の美猫だから『小町』がぴったりじゃない?」と名前も決まった。
「なぜか産んだ気持ちになったんですよね。猫を友だちのように思う人もいるけど、私の場合は、完全にわが子です」
「長女」を迎えた能町さんは、いまや母の顔。小町ちゃんに話しかけるときの自分の呼び名は、「ママにゃん」だ。小町ちゃんの愛称が「こまにゃん」なので、語呂を合わせると「ママにゃん」になるという。
小町ちゃんに甘えられているときの能町さんは、愛情の熱量が高い。そのぞっこんな姿は、取材に同席していた夫のサムソン高橋さんに「声質がふだんとぜんぜん違う。気持ち悪い」と言わしめるほど。能町さんも「アキラ(高橋さんのこと)には見せていない顔だからね」と照れる。
もともと能町さんは、ノラ猫を手なずける策を練るほどの猫好き。長年、うっすらと共に暮らしたい気持ちはあった。しかし、一人暮らしのころは、家にいる時間が少なかったこともあり、踏み切れなかった。
気持ちが変わってきたのは、高橋さんと暮らし始めてから。一緒に面倒を見てくれる高橋さんがいることで、猫を迎えるハードルが下がった。